2025年1月、埼玉県八潮市で大規模な道路陥没事故が起きてしまいました。
突然の道路陥没に衝撃を受けた痛ましい事故ですが、実は日本全国では年間9,000件もの同様の陥没事故(シンクホール)が発生しているといわれています。
予測が困難な陥没事故に対して保険が適用されるかどうか、そしてどのような保険に加入しておけば安心なのかを、保険的観点から詳しく解説します。
忙しい人はこちら
陥没事故・シンクホールとは?
道路が突然崩れ落ち、穴があいてしまう陥没事故は「シンクホール」という現象が原因とされています。
シンクホールとは、地下の地層に空洞ができて表層が耐えきれず陥没してしまうことです。
石灰岩やドロマイトなど、水に溶けやすい岩石でできた地層では自然に発生することがありますが、日本はそうした地層が比較的少ないです。
一方、鉱山や採掘場の跡地、水道管や下水管が通る場所、地下工事の進行中エリアなどで、何らかの理由で土砂が押し流されることで空洞が生じ、シンクホールの原因となることがあります。
道路がコンクリートで舗装され、車両や人が絶えず行き来する場所ほど負荷が強くなるため、地下に空洞ができるとその重みに耐えられず陥没してしまうのです。
シンクホールの原因
シンクホールが起きる原因は多岐にわたりますが、日本国内で頻発している原因としては、主に次の3つが挙げられます。
地下水が原因の場合
日本にはパイプ流と呼ばれる地下水脈が張り巡らされており、雨が多い季節には地下水量が増加して流れが速く・強くなります。
すると土砂が流されやすくなり、地下に空洞ができてしまうことで、道路の重みに耐えきれず陥没が発生するのです。
ご自宅の周辺の地下水脈については、国土地理院の土地条件図といった無料公開されている地図ツール、各自治体のハザードマップや防災情報から確認できます。
ただ、地図ツールはとても専門的で複雑な見た目になっていますので、「○○(お住まいの市町村) 地下水 防災」といった感じで検索していただくのが一番スムーズかと思います。
工事が原因の場合
地下鉄や地下空間を新設するための工事などで、何らかの原因で地下空間に大量の水が流れ込んでしまうと周囲の地層にある土砂が押し流されて空洞が広がります。
その結果、地表が支えを失って崩落し、大きな陥没事故に発展します。
勿論、技術が発達した現在ではそういったことが無いように事前の調査や対策を施して工事をおこなっているはずですが、まれに工事が原因でシンクホールが発生した事例があります。
下水管の老朽化や破損が原因の場合
下水管は数センチ程度の細いものから、何メートルもの巨大なものまで多様です。
設置、導入当初は劣化が少なく、耐用年数は50~100年で半永久ともいえるという肩書がありましたが、後から腐食・ひび割れ・土壌沈下によっては30年程で修繕が必要になると判明しました。
そのため各自治体(管理局)では定期的に劣化状態を確かめ、耐用年数を見極めて修繕や交換といった作業を行いますが、調べることも含めて多大な費用が掛かります。
修繕前に老朽化や破損によって下水管に穴があくと、周囲の土砂が管内へ流れ込み、やがて地表に空洞が生じることがあります。これが道路陥没事故へとつながります。
その他の原因
鉱山や採掘場の跡地など、地盤がもともと脆くなっているエリアでも陥没が起こることがあります。
また、大きな地震や液状化現象が引き金になってシンクホールが発生するケースもあるのです。
過去に起きた陥没事故
| 発生年 | 場所/事故名 | 原因 |
|---|---|---|
| 1973年 | 沖縄県那覇市 琉海ビル陥没事故 |
海沿いの埋立地で軟弱地盤であった上 突貫工事が行われていた可能性があった。 |
| 2001年 | 兵庫県明石市 明石砂浜陥没事故 |
海底に並べたケーソン(コンクリート製基礎)の継ぎ目のゴム製防砂板が劣化。 砂が海へ流出したため、砂浜の下に空洞ができていた。 |
| 2016年 | 福岡県福岡市 博多駅前道路陥没事故 |
岩盤層を掘り進めていたトンネル上部の地盤が割れ 地面と岩盤層の間にあった地下水や土砂が坑内に流れ込んだため。 |
| 2025年 | 埼玉県八潮市 八潮市道路陥没事故 |
交差点地下10メートルにある下水道が一部破損。 具体的な原因は調査中 |
出典:Wikipedia など
陥没事故・シンクホールに対応する保険は?
陥没事故で被害を受けた場合に補償されるかどうかは、加入している保険の種類と被害内容、そして陥没の原因や責任の所在によって変わります。
とくに道路や土地の管理者、工事業者の責任で発生した場合と、自然災害による場合などでは保険金の支払い可否に大きな差が出るため、複雑な点が多いです。
ここでは、対象となる財物や車、人への被害パターン別に見ていきましょう。
家や家財が被害を受けた場合
居住用・所有している住居や家財に被害が出たときは、火災保険の適用が最も考えられます。
ただし、火災保険にもさまざまな補償プランがあり、原因に合わせて水災補償や地震保険を付帯しているかどうかがポイントです。
水災補償は台風や豪雨、洪水などによる被害だけでなく、地下水の増水が原因の陥没にも適用される可能性があります。
地震による液状化現象で地盤が崩れた場合は地震保険が該当します。
一方、工事や下水管の老朽化が原因で起きた陥没は責任の所在が明確になる場合が多く、管理者・施工業者などの賠償責任が問われます。
その場合、火災保険での補償は下りにくいと考えておくほうが自然です。
賠償してもらえなかったら泣き寝入りになってしまうので、被害にあった場合は責任が明らかになるまでは状況を見守る必要があります。
もし急いで保険の申請をしたい場合は、後述する「原因がわからない場合の対応」を参考にしてください。
水災補償については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
ぜひご参考ください。

お店や事務所、工場など事業用の建物が被害を受けた場合
被害を受けた建物が事業用の場合は、事業用の火災保険や水災補償が適用されるケースがあります。
ただし、事業用の補償内容は居住用物件とは異なるため、補償や条件なども事業用保険独自のものが多く、条件設定が複雑化している傾向があります。
現在加入中の方は、保険の契約内容や約款を今一度ご確認ください。
また、大規模な陥没事故が起きると、建物自体に損害を受けなかった場合でも事業に支障をきたすケースがあります。
道路が封鎖・規制されれば、工場や物流倉庫なら配送が止まり、店舗ならお客様の来店が見込めず休業を余儀なくされることもあるでしょう。
下水道の使用が出来なくなった場合、水を使う製造業、飲食店、その他店舗でも営業が難しくなりますし、状況によっては臭いの問題が出てきます。
そういった営業損失には「逸失利益補償」や「使用不能損害補償」が該当しますが、これらは事業用火災保険の基本補償ではない場合や、火災保険とは別の単独の保険商品として扱われていることが多いです。
契約していないと補償されないため、繰り返しにはなりますが、事業用の保険については改めて内容をチェックすることがおすすめです。
人や車が被害を受けた場合
陥没による事故で犠牲者が出てしまうほどの被害が生じた例もあります。
もし人が巻き込まれた場合、個人で加入している生命保険の傷害補償や死亡保険、あるいは傷害保険が対象になるケースがあります。
仕事中に被害を受ければ労災が、車での移動中なら自動車保険が適用される場合があります。
契約内容によっては重複して保険金を受け取れる場合もあるため、条件をよく確認することが重要です。
車両そのものが陥没事故で損壊したときは、一般的に自動車保険の車両保険から支払いを受けられます。
車対車やエコノミー型の車両保険であっても、運転者に過失がない事案(飛び石や自然災害など)が適用範囲になっている場合、陥没事故も補償対象になる可能性があります。
他者に被害を与えてしまった場合
工事業者や下水管の管理者、関連会社などに責任があると判断された場合は、その責任者が被害者へ賠償金を支払うことになります。
賠償金の支払いには賠償責任保険が用いられるケースが多く、施工前の事故には施設賠償保険、施工後に起きた事故にはPL保険(製造物責任保険)が該当することが一般的です。
ただし、どの立場でいつ事故が起きたのか、原因は何なのかなど、細かな状況に応じて保険の種類や適用の可否は変わります。
原因がわからない場合の対応
シンクホール現象による陥没事故は、被害者への賠償や陥没箇所の賠償など、対応に膨大な資金が必要になります。
そのため、工事中に予兆や異変があった、豪雨によって地下水が急増したといった明確な原因がわからない場合、責任の所在が誰にあるのかを決定することが難しいというのが現状です。
原因追及にはそれなりの時間がかかり、被害を受けてすぐに賠償を得られるといったケースは少ないでしょう。
原因が不明なまま長い期間賠償されないと、家や車の修繕費を全て自費で支払わなければならないため、困る人が多いかと思います。
そこで、とある保険会社の方に確認してみました。
水災補償の案内や約款で補償する事故に「シンクホール」が乗っていれば、支払われる可能性がある。
原因不明のシンクホール事故への補償について約款で定められていない場合、支払いは難しいと思う。
これが保険会社の公式な見解という訳ではないのですが、このように原因不明のシンクホール事故の被害に対する補償は明確な答えが決まっていません。
※保険会社によっては、原因の内容を条件に細かく定めているところもあります。水災補償の約款をご確認ください。
とはいえ、保険会社が全く何もしないという訳ではありませんので、もし被害にあった場合は保険会社にご確認ください。
保険会社に連絡しにくい……という場合は、保険代理店に相談するのがいいでしょう。
ダイレクト型保険でないなら、契約時に利用した保険代理店でなくとも相談を受けてもらえるケースがあります。
この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』でも動画解説しています!
メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。
陥没事故・シンクホールについてまとめ
陥没事故(シンクホール)は自然災害か人為的ミスかで責任の所在が変わり、保険金の支払い可否に影響を与えます。
住居や家財、事業用建物に対する補償は火災保険や事業用保険の水災補償・地震保険などがベースになりますが、工事が原因なら管理者や施工業者の賠償責任保険が、車が被害を受けた場合は車両保険や労災などが適用される場合があります。
とはいえ、原因が不明なうちは保険会社との交渉も難しく、責任の所在が定まらないと泣き寝入りになるリスクもあるのが現状です。
シンクホールは日本国内でも年間9,000件以上発生していると言われるほど身近な現象でありながら、まだ法的・保険的整備の面では曖昧な部分があります。
もしものときに備えて、加入中の火災保険や事業用保険、自動車保険などの補償内容を改めて確認しておきましょう。
また、万一陥没事故に遭遇した場合は、すぐに保険会社に連絡し、必要に応じて専門家の調査や公的機関のサポートを受けることが大切です。





コメント