日本には活火山が多く、噴火による被害は「降灰で機械が止まる」「噴石で窓が割れる」「火砕流で建物が損壊する」など多岐にわたります。
では、こうした噴火災害にどの保険で備えられるのでしょうか。
この記事では被害の型を整理し、火災保険・地震保険・自動車保険・傷害保険(登山保険/国内旅行保険を含む)の噴火対応をわかりやすく解説します。
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火山噴火によって受ける損害とは
日本には111の活火山があるといわれており、噴火現象は毎年一定数発生します。
観測や警戒情報は気象庁が発表しており、地域のハザードを知る出発点になります。
噴火には代表的に次の三つのタイプがあり、危険の及び方が異なります。
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マグマ噴火:地下のマグマが地表へ噴出。
爆発的になれば広範囲で降灰・噴石・溶岩流などのリスクが高まります。 -
水蒸気噴火:マグマで熱せられた地下水が急膨張して岩体ごと噴き上がるタイプ。
前兆把握が難しい場合があります。 -
マグマ水蒸気噴火:地下水や浅海の海水が高温マグマに触れて瞬時に気化。
マグマを細片化し爆発力が増します。
これらに伴って想定される主な損害を整理します。
| 損害 | 詳細 | 対象 |
|---|---|---|
| 降灰損害 | 広域に火山灰が堆積し、視界不良・吸気の目詰まり・屋根荷重増や雨どい詰まりなどを生む | 建物・家財・自動車・インフラ |
| 噴石損害 | 飛散する岩塊が外装・屋根材・ガラス等を破損 | 人身・建物・家財・自動車 |
| 溶岩流 | 高温の溶岩が地形に沿って流下し、接触対象を焼損・埋没 | 人身・建物・家財・自動車 |
| 火山性ガス | 有毒ガス滞留による健康被害や金属腐食のリスク | 人身(最優先で安全確保) |
| 火砕流損害 | 高温のガスと火山砕屑物が高速で流下。 最も致命的な火山現象の一つ |
人身・建物・家財・自動車 |
こういった損害の中でも注目したいのが、火砕流損害です。
次の項目で詳しく解説します。
火砕流損害とは
火砕流は高温・高速で、場合によっては時速100kmを超えて斜面を駆け下ります。
致死性が非常に高く、避難計画でも最優先で想定されるべき現象です。
成因別に挙動が異なるため、代表的な二つを押さえておきましょう。

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噴煙柱崩壊型火砕流(図1):爆発的噴火で立ち上がった噴煙柱が不安定化して崩れ落ち、広範囲に流下・拡散するタイプ。
強い噴火では火砕サージ(希薄で高速な部分流)を伴い、地形の影響を受けにくく広域に及びます。
歴史的にはプレー山(1902年)やピナツボ(1991年)の大規模被害が代表例です。 -
溶岩ドーム崩壊型火砕流(図2):粘性の高い溶岩が山頂で溶岩ドームを形成し、それが崩落して急速な火砕流・火砕サージを繰り返し発生させるタイプ。
日本では雲仙普賢岳(1991年)で多数発生し、長距離到達と甚大な人的・物的被害をもたらしました。
一晩にして町が一つ滅んでしまったことで有名なイタリア・ポンペイの噴火は、噴煙柱崩壊型だったと言われています。
自宅から10~数10kmの範囲に活火山がある場合は、その火山の現状や避難場所などを今一度確認しておきましょう。
参考リンク:巨大噴火による火砕流は自然災害中で最大の被害を引き起こす可能性がある -1991年雲仙岳火砕流,1991年ピナツボ火山噴火,1902年プレー火山噴火など|防災科学技術研究所ライブラリー
火山噴火の被害に有効な保険とは
まず先に前提として、保険はどのようなものであっても他の保険と補償が重複しないように設計されています。
火災保険で車の火災被害を補償しないように、他の保険で補償するものは補償しないようになっているのです。
この前提を踏まえたうえで、火山噴火による損害は地震保険の補償範囲とされているため、基本的に噴火損害を補償してくれるのは地震保険だけです。
しかし、特約の有無によっては地震保険ではない保険でも噴火損害を補償してもらえます。
ここでは分野別に「どこまでカバーされるか/されないか」を具体的に見ていきます。
自動車保険
多くの車両保険は、噴火(地震・津波を含む)による車両損害は補償されませんが、地震原因の損害に対し一時金を支払う等の特約があります。
車両保険では、「地震・噴火またはこれらによる津波」によって発生した損害について、車両保険金をお支払いしません。
本特約をセットしていただくことで、地震・噴火またはこれらによる津波によってご契約のお車が全損(注)となった場合に50万円を地震等保険金としてお支払いします。(車両保険金額が50万円未満の場合は、車両保険金額を保険金としてお支払いします。)なお、地震等保険金をお支払いした場合でも、当社はご契約のお車の所有権を取得せず、廃車や撤去等に要する費用を負担しません。
(注)
この特約における「全損」は、車両保険や全損時諸費用特約等における「全損」と内容が異なります。詳細につきましては、『<パンフレット別冊>主な補償・特約のご説明』『ご契約のしおり(普通保険約款・特約)』等をご確認ください。
出典:地震・噴火・津波「車両全損時定額払」特約 – 三井住友海上の自動車保険
しかし、この特約は車両保険の特約であり、対人・対物・人身傷害に関しては地震に関する特約はほぼ無いと言っていいでしょう。
自動車で避難する際に交通事故を起こしてしまった場合は、自動車保険では補償されません。
安全優先で迅速な避難のために自動車を使うことは全く問題ないのですが、誰もが混乱している状況だということを踏まえて、いつもより事故に気を付ける必要があります。
- 地震一時金特約の活用:通常の車両保険で補えない地震・噴火リスクを定額でカバー。
- 避難時の運転に注意:混乱や視界不良で事故率が上がるうえ、噴火起因の事故は不担保のことが多い。
- バイク・原付も同様:約款の天災免責や特約の可否を確認。
火災保険&地震保険
火災保険に加入しており、なおかつ地震保険も付帯させている場合は、建物や家財が補償されます。
保険金は地震保険のルールに沿って支払われます。
噴火で建物が被害を受ける例
- 屋根上の降灰堆積により荷重増・雨どい詰まり・雨漏りが発生
- 噴石で屋根材・外壁・窓ガラスが破損
- 溶岩流や火砕流で焼損・埋没・倒壊
- 火山性地震や地盤変状で躯体が損傷
- 降灰混じりの泥流(火山泥流)で浸水・家財破損
降灰や軽い噴石のみで被害額が一部損の基準に達しなかった場合は、地震保険は機能しません。
不安な方は今のうちに保険金額や地震保険のルールなどをおさらいしておきましょう。
地震保険のルールに関する記事はこちら↓

傷害保険(登山保険・国内旅行保険を含む)
一般の傷害保険は、基礎補償では地震・噴火・津波を免責とするのが通例です。
ただし、傷害保険の一種である国内旅行保険は、特約を付けることで噴火によるケガ等を補償できる商品があります。
登山やトレッキングを想定したいわゆる登山保険(山岳保険・共済を含む)では、噴火や地震によるケガ・救助費用を対象にするプランが複数あります。
火山域へ入る計画がある場合は、出発前に適用条件と救助費用の上限を必ず確認しましょう。
- 一般の傷害・国内旅行:天災免責が基本。
天災危険補償特約の有無をチェック。 - 登山・アウトドア系:噴火によるケガ・救助費用を対象にするプランあり(条件差に注意)。
- 海外旅行保険:地震・噴火・津波の人身事故に標準対応する設計が多いが、遅延・手荷物等の一部特約は除外される場合あり。
この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』で動画解説しています!
メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。
まとめ
噴火は頻度の低い巨大リスクと見なされがちですが、降灰や噴石のような「広域かつ中程度」の事象は現実的に起こり得ます。
自宅・家財は地震保険で、車は一時金特約などで、レジャー中の人身は天災危険補償特約や登山保険で、といった具合に役割分担を理解し、証券で条件を確認しておきましょう。
地域のハザードマップや避難計画と併せて備えを進めることで、いざという時の判断が速くなります。






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