全国の自治体で自転車保険加入が次々と義務化されています。とはいえ「保険商品が多過ぎて選べない」「他の保険特約で本当に代用できるの?」と悩む声も少なくありません。
そこで、この記事では自転車保険とは何か、どんな補償があるのか、自分や家族のライフスタイルに合った備え方をわかりやすく解説します。
また、加入義務のある自治体や高額賠償事例、代用できる火災・自動車保険の特約情報、自転車保険独自のメリットまでまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
忙しい人はこちら
自転車保険とは?
自転車走行中の事故による損害をカバーする任意保険です。
リスクは大きく分けて
(2)自分がけがを負う人身リスク
の2種類に分かれます。この部分はとても重要なところですので、これを念頭に記事を読んでもらえると嬉しいです。
軽車両とはいえ速度や重量によっては深刻な後遺障害や死亡事故につながり、賠償額が1億円近くに達した裁判例もあります。
自転車による事故例(高額賠償判決)
| 賠償金 | 運転者 | 事故内容(判決年月) |
|---|---|---|
| 9,521万円 | 小学生 | 通学中に歩行者と正面衝突し 重度後遺障害(2013年7月 神戸地裁) |
| 9,266万円 | 成人男性 | 車道走行中に飛び出した自転車が 他の自転車と衝突し、言語機能喪失などの 後遺障害が残った(2008年6月 東京地裁) |
| 5,438万円 | 30代男性 | 信号無視で横断歩行者を 死亡させる(2007年4月 東京地裁) |
| 4,746万円 | 成人女性 | 赤信号で横断歩道へ進入し 歩行者死亡(2014年1月 東京地裁) |
「自分は大丈夫」と思っていても、気を付けているつもりでも、自転車事故はいつでも起きる可能性があります。
それは個人ごとの自転車交通ルールへの認識にずれがあるからです。
多くの自治体では交通ルールに関する案内のページがホームページに公開されています。
そして、「自転車安全利用五則」と言うものが記載されているでしょう。
- 車道が原則、左側を通行 歩道は例外、歩行者を優先
- 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
- 夜間はライトを点灯
- 飲酒運転は禁止
- ヘルメットを着用
この車道が原則、歩道は例外と書かれている一文に対して、どのように考えるのかは人によって違いが出るように思えます。
- 例外と言うからには何か詳しい条件があるはず
- 歩行者がいなければ歩道を走っていいだろう
- 歩行者をよければ歩道を走っていいだろう
- みんな普通に歩道を走っているし、いいだろう
こういった認識のブレから、何も考えずに歩道を走っている自転車も多いのです。
一般的に、次のような標識がある歩道や、自転車専用レーンがある歩道は自転車で走行しても良いとされています。そういった標識がある歩道が『例外』にあたります。

ただ、標識や専用レーンがある道でも、歩行者を優先せず強引に追い越したり、歩行者がよけて当然だと考えているような自転車の乗り方をしている人がいるのも、現実です。
田舎には歩道と車道の区別がつかないような狭い道もありますし、自転車に乗る人と歩行者、どちらか一方が気を付けていても、どちらか一方が間違った認識を持っていれば事故が起きてしまう可能性があるのです。
自転車保険への加入を義務化する自治体が増えている
| 自治体 | 義務化の形態 | 施行年月 |
|---|---|---|
| 東京都 | 義務(罰則なし) | 2020年4月1日施行 |
| 大阪府 | 義務(罰則なし) | 2016年7月1日施行 |
| 兵庫県 | 義務(罰則なし) | 2015年10月1日施行 |
| 全国状況 | 義務34都府県/努力義務10道県/未義務化3県 | 2024年10月時点 |
条例の“義務”には強制・努力義務など濃淡がありますが、万一未加入で事故を起こすと経済的ダメージは甚大です。
とはいえ「自転車保険」という商品名にこだわる必要はなく、他保険の賠償特約でも要件を満たす場合があります。
自転車事故に備えられる他の保険特約
複数保険に加入済みの方は、なるべく保険数を増やしたくないもの。
実は以下の保険&特約で代用可能です。
他人への賠償は「個人賠償責任特約」でカバー
日常生活で偶発的に他人をケガさせた・物を壊した場合に補償される特約で、自転車事故も対象です。
この特約は火災保険や傷害保険、クレジットカード付帯保険などで設けられています。
個人賠償責任特約が付帯できる火災保険例
| 会社 | 保険商品 | 特約名 | 限度額(例) |
|---|---|---|---|
| 日新火災 | お家ドクター火災保険Web | 個人賠償責任補償特約 | 3,000万円/5,000万円/1億円 |
| ソニー損保 | 新ネット火災保険 | 個人賠償責任補償特約 | 3億円 |
| 損保ジャパン | THE すまいの保険 | 個人賠償責任特約 | 1,000万円/3,000万円/5,000万円/1億円 |
個人賠償責任特約を付けたことで保険料がどれほど変わるのかは保険次第ですが、年間数千円程度でしょう。
お小遣いレベルの費用で保険料で1億円規模の賠償に備えられるコスパの良さは魅力的です。
個人賠償責任について、こちらの記事で詳しく解説しています。

自分のけがは「交通乗用具特約」でカバー
自動車保険の人身傷害に付帯できる「交通乗用具特約」を付ければ、自転車事故によって負ったけがが補償されます。
またこの特約はバス・電車など乗り物利用中のけがや、駅構内での事故も補償範囲に入ります。
交通乗用具特約がある自動車保険例
| 会社 | 保険商品 | 特約名 | 限度額(設定例) |
|---|---|---|---|
| 日新火災 | ユーサイド | 交通乗用具事故特約 | 3,000万円/5,000万円/1億円(人身傷害保険金額に連動) |
| 損保ジャパン | THE クルマの保険 | 人身傷害交通乗用具事故特約 | 3,000万円〜無制限(プラン選択) |
| 三井住友海上 | GK クルマの保険 | 交通乗用具事故特約 | 無制限(人身傷害保険金額に連動) |
※最新の情報は各社の案内やパンフレットをご確認ください。
※被保険者の範囲は「同一生計」が基準。二世帯住宅など家計を分けている場合や被保険者限定プランでは対象外になることがあります。

仕事中の事故は事業用保険で対応
業務中の配達や移動中に起きた自転車事故の治療費、事故による賠償責任は、雇用主(法人)が加入する事業用賠償保険で補償されるのが原則です。
ただし通勤中は個人賠償責任が問われるケースもあるため、就業規則と保険範囲を事前に確認しましょう。
事業用の賠償責任保険について、こちらの記事をご参照ください。

自転車保険のメリットと必要性
「特約で代用できるなら十分」と思う方も、自転車保険独自のサービスを知ると考えが変わるかもしれません。
あらためて自転車保険の補償内容を解説しながら、メリット、あえて自転車保険を選ぶ必要性も解説しますね。
主な自転車保険の商品比較
自転車保険といっても、実は保険商品ごとにいくつかの特色を持った保険に分かれます。
これは冒頭で説明した二つのリスク(他人へ怪我を負わせた賠償/自分が怪我をする)のどちらを重視しているか、また自転車保険を販売する会社の特色などによる違いです。
ざっくりと分けると
- 傷害保険・生命保険寄り
- 個人賠償責任保険寄り
- 自動車保険寄り
といったタイプに分けられます。
それを踏まえて、代表的な自転車保険とその補償内容を見ていきましょう。
| 会社 | 商品名 | 性質 | 主な補償内容 |
|---|---|---|---|
| 東京海上日動 | eサイクル保険 | 傷害保険寄り | 死亡・後遺障害、入院、手術、個人賠償責任ほか |
| 三井住友海上 | ネットde保険@さいくる | 傷害保険寄り | 死亡・後遺障害、入院、手術、通院、賠償責任 |
| 損保ジャパン | UGOKU | 賠償+自動車保険寄り | 賠償責任、人身傷害交通乗用具、弁護士費用、示談交渉、ロードアシスタンス、移動宿泊費用 |
| au損保 | Bycle(バイクル) | オールマイティ | 賠償責任、死亡・後遺障害、入院・手術・通院、弁護士費用、示談代行、ロードサービス |
このように、自分のけがに対して入院、手術、入院一時金、死亡・後遺障害など手厚い補償を設けている自転車保険もあれば、交通乗用具特約と同じ扱いでロードサービスが手厚くなっている自転車保険もあります。
加入目的に合わせて選べば、欲しい補償でしっかり備えることができますね。
自転車保険ならではのメリット
他人へ怪我を負わせてしまった賠償責任のカバー、自分の怪我に対する治療費の補償などは、先述した通り他の保険で代用が可能です。
しかし、自転車保険ならではの補償や付帯サービスもあり、人によっては単独の自転車保険に入った方がいいケースもあるのです。
- 示談交渉サービス:火災保険の賠償特約には付かないことが多く、相手方との交渉を任せられる安心感は大きい。
-
ロードサービス:パンク・チェーン切れなど走行不能時に現場対応や搬送を依頼できる。
遠出やロングライド派には必須。 - 選択肢の多さ:賠償責任を重視したシンプル型から、けが補償・生活サポートまで含む総合型まで選択肢が豊富。
上記サービスが付帯する代表的な商品は「Bycle(バイクル)(au損保)」と「UGOKU(損保ジャパン)」です。
自転車保険の必要性まとめ
条例の加入義務を満たすだけなら「賠償責任補償付き」商品(または他保険の賠償特約)でOK。
一方、自分のけが・ロードサービス・示談交渉まで求めるなら、自転車保険を選ぶ価値があります。
遠出や競技志向のサイクリストは手厚いプランを、日常使いが中心の人は火災・自動車保険の特約+高めの限度額設定でコスパ重視――と目的別に選びましょう。
この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』で動画解説しています!
メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。
まとめ
自転車事故の高額賠償事例や義務化の流れを踏まえ、少なくとも「対人賠償1億円程度」の補償は確保したいところです。
条例の要件は火災保険や自動車保険の特約でも代用できますが、自転車保険なら示談交渉サービスやロードサービスなど独自のメリットがあります。
使用シーンや家族構成に合わせて、〈賠償責任を重視したシンプル型〉か〈けが・ロードサービスも網羅する総合型〉かを選び、安心してサドルにまたがれる環境(?)を整えましょう










コメント