新型コロナが流行した際に注目を集めた、イベント中止保険(興業中止保険)。
かなりマニアックな保険として知られていますが、小規模なイベントであっても会場や機材のレンタル費、中止に伴う対応にかかる手数料や人件費など、それなりの損害が出るのでイベントを開催するときは入っておくと安心できる保険です。
ただし中止の理由や補償内容など、少しクセがある保険なので、注意しなければいけないポイントもあります。
それぞれを詳しく解説しますので、イベント開催の”もしも”に備えましょう。
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イベントを中止して損害を被った場合の保険
コンサートや講演会、スポーツ大会、花火大会などのイベントを、天候(自然災害)やその他予期せぬトラブルによって中止せざるを得なかった場合、イベント開催にかかった費用や会場のキャンセル料といった損害が発生します。
そのような場合に役立つのが、興業中止保険(イベント中止保険)です。
保険商品によっては中止ではなく延期した場合の費用も補償してくれるものがあります。
興業中止保険は、2020年以降に流行した新型コロナによってイベントを開催できなくなってしまったケースが相次いだ時期に、改めて注目を集めました。
まずはこの保険の概要を見てみましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象のイベント | 集客を目的とした興行的イベント (ライブ・コンサートやスポーツ大会、演劇、花火大会、展示会、フードフェス、講演会などさまざま) |
| 補償内容 | 中止を決定した時点で発生していた支出(経費)がメイン ※保険商品やプラン、契約内容によって異なる |
| 補償される中止理由 | 予期し得ない突発的なトラブル・不可抗力なものがメイン 保険商品やプランによって範囲が幅広かったり、狭まっていたりする |
| 保険金(補償額) | 契約申し込み時点で申告したイベント開催の全費用×縮小割合 ※保険商品やプランによって異なる |
| 保険料 | 掛け捨て型が基本 補償額、補償内容や収容人数、開催期間、会場の広さやイベントの内容などから算出 ※保険商品やプランによって異なる |
気になるところがいくつかあるかと思います。
一つ一つポイントと注意点を見ていきましょう。
イベント中止保険・興業中止保険の補償内容
この保険の補償内容は、「実際に支出(経費)が発生してしまった部分」がメイン補償です。
イベントを開催するにあたりかかる費用のうち、イベントを中止すると決定した時点で支払い済みの費用や、契約上支払義務が確定している費用(未払い分を含む)が主に対象となります。
また、チケット購入制のイベントだった場合、中止に伴いチケット代金を返金する際にかかる手数料など、中止しなければ発生しなかった費用(中止に伴い臨時で発生する費用)を補償に含む保険も多いです。
イベントの種類や規模、期間に合わせてオーダーメイドといった設計になっている保険商品が多いため、契約前の時点で「コレとコレを補償します!」と断言はできません。
東京海上日動火災保険『興行中止保険』 補償内容
悪天候、交通機関の事故等の不測かつ突発的な事由により、イベントが中止または延期した場合に保険金をお支払いします。
悪天候による中止のみを対象にする等、個々のイベントごとにオーダーメイドで設計いたします。詳細は、代理店または東京海上日動までお問い合わせください。
出典:補償内容 | 興行中止保険 | 東京海上日動火災保険
三井住友海上『興行中止保険』
なお、この保険はオーダーメイドの保険ですので、ご契約にあたっては、事前に十分なお打ち合わせをさせていただきます。
出典:興行中止保険|法人のお客さま|三井住友海上
イベント開催によって得られるはずの営業利益(例えばグッズ販売の利益部分※)を補償するような設計にできる保険もありますが、利益額の算出やリスク判定が複雑になるため、あまり多くはありません。
※グッズの制作費用はイベント開催にかかる費用として換算されます
そして、このように補償額に営業利益も含めると、保険料は高くなります。
基本的には下記のような費用が補償されると考えてよいでしょう。
- イベント開催の準備にかかった費用(会場を借りるためにかかった費用、機材代、出演料など)
- 中止に伴い臨時で発生した費用(チケット返金手数料・事務手数料など)
最近は、一日限定イベントのプラン、中止理由を悪天候のみに特化したプランなど、さまざまなプランが増えています。
補償範囲が狭いプランは保険料が安めになるため、イベント内容や予算に合わせて適したプランを選びましょう。
イベント開催のために支出していた費用は、イベントの中止を決定した時点で発生していた費用に限ります。
会場利用料のキャンセル料金は会場ごとに異なり、早めに中止するとキャンセル料が利用料よりも安くなるケースもあるため、中止を決めたタイミングで補償額が変わります。
イベント中止保険・興業中止保険で補償されるイベント中止理由
この保険は、どのような理由でも中止すれば必ず補償されるというわけではありません。
保険商品やプランによって異なりますが、予測できない突発的な理由で、不可抗力といえるものに限られる傾向があります。
一般的な例としては、
- 悪天候など、天候や自然災害が理由
- 出演者(厳密には補償対象の範囲に入る人)の体調不良や交通事故等で出演が不可能になった場合
などが挙げられます。
イベント中止保険・興業中止保険の補償額と保険料
補償額(保険金)は、一般的に、申し込み時点でわかっているイベントの全費用をもとに決められます。
イベント全費用に「保険金支払い時の上限割合」や「免責金額(自己負担分)」といった縮小割合を乗じた金額が、実際の支払限度額です。
全費用の70~90%を補償する保険商品が多いですが、ものによっては縮小割合がなく、100%補償してくれるケースもあります。
また、保険商品によってはイベントの内容で縮小割合が変わることもあります。
イベント中止保険・興業中止保険は開催の3か月前~14日前までに申し込み手続きをする必要があることが多いです。
補償額の算定やイベントの内容・規模・期間・開催地などからリスク判定を行う時間が必要になるため、直前に「天気が悪そうだから入ろう」といったことは難しいでしょう。
保険料は、補償額や保険設計、プラン内容、イベントの内容等から算出されるリスク判定などで決定します。
補償対象が「悪天候による中止のみ」なのか、「ライブ出演者だけでなくスタッフの体調不良も対象」なのかなどでリスクや想定損害額が変わるためです。
例を挙げると、イベントの全費用が1,000万円だった場合、補償額(保険金)を900万円に設定し、保険料が100万円といったイメージです。
何度か触れていますが、イベントの内容や規模によって大きく変わるため、保険代理店で見積もりを取るのが賢明でしょう。
掛け捨て型なので、事故が起こらなければ支払った保険料は戻ってきません。
規模によっては無視できない負担となる可能性もあるので、保険代理店に相談しましょう。
イベント中止保険・興業中止保険の注意点
以上の補償内容や中止理由、保険金・保険料の説明からも分かるように、興業中止保険にはいくつかの注意点があります。
ルールが細かい
保険商品にもよりますが、補償範囲が広い火災保険などと比べると免責事項の総数は多すぎるというわけではありません。
しかし、対象イベントの内容が幅広い分、中止リスクも多岐にわたるため、免責事項も幅広く設定されがちです。
イベントには、主催者や興業者だけでなく、協賛や後援、協力という形で複数の企業や団体が関わっている場合が多いですよね。
関係者が増えるほど、不測かつ突発的な理由以外にも中止せざるをえない状況が生じやすくなるため、保険会社としてはありとあらゆる免責事項を設定しておく必要があるのです。
また、感染症によって中止せざるを得ない状況を補償範囲に含める場合は、リスク判定や補償額の算出がさらに複雑になるため、標準的な設計では免責事項として扱われていることが多いです。
加入者の要望によって補償対象に組み込むことも可能な商品はありますが、そうすると保険料が上がる傾向にあります。
相場が良く分からない
火災保険などのように、所在地や建物の構造、面積、補償内容等の組み合わせである程度目安の保険料を提示できる保険商品とは異なり、興業中止保険の場合はイベントの内容や規模、期間によって補償内容や補償額が大きく変わります。
そのため、「こういうイベントならこの保険料です」と明確に提示しづらく、相場感も専門家でなければあまりわからないのが実情です。
この記事で取り上げていた東京海上日動、三井住友海上の興業中止保険では、以下のように補償額や保険料の例が公表されていますのでご紹介します。
※あくまで一例としてご覧ください
※2025年5月の情報です
| 開催場所 | 関東地方 |
|---|---|
| 開催時期 | 11月(1日間) |
| お支払いの対象となる事由 | 興行期日当日の悪天候またはそのおそれがあること。 |
| お支払いの対象となる損害(費用項目) |
|
| 支払限度額 | 1,000万円 |
| 縮小支払割合 | 90% |
| 保険料 | 95万円 |
| 開催場所 | 近畿地方 |
|---|---|
| 開催時期 | 8月(1日間) |
| お支払いの対象となる事由 | 興行期日当日の悪天候またはそのおそれがあること。 |
| お支払いの対象となる損害(費用項目) |
|
| 支払限度額 | 500万円 |
| 縮小支払割合 | 90% |
| 保険料 | 80万円 |
| 規模 | 費用総額100万円 |
|---|---|
| 開催場所 | 大阪府の公園 |
| 開催時期 | 8月下旬(2日間) |
| お支払いの対象となる事由 | 悪天候リスクによる中止 |
| お支払いの対象となる損害(費用項目) |
|
| 支払限度額 | 100万円 |
| 縮小支払割合 | 100% |
| 保険料 | 約10万円 |
| 規模 | 費用総額3,000万円 |
|---|---|
| 開催場所 | 東京都内の野球場 |
| 開催時期 | 10月下旬(1日間) |
| お支払いの対象となる事由 | 不測かつ突発的な事由による中止 |
| お支払いの対象となる損害(費用項目) |
|
| 支払限度額 | 2,100万円 |
| 縮小支払割合 | 70% |
| 保険料 | 約210万円 |
案内のパンフレットやサイトが少ない
この保険はイベントの内容等に合わせて細かく設定するオーダーメイド保険という性質が強いことから、不特定多数の加入者に共通して提供できる資料があまり多くありません。
免責事項や保険金を支払えない場合、縮小割合などは共通していますが、そういった部分だけを詳しく案内するのも印象がよくないからでしょう。
そのため、パンフレットは代理店の店頭や資料請求で入手できる形になっていたり、公式サイトでも簡単な案内にとどまり「詳しくは代理店にお問い合わせください」という流れになっています。
ネット上の情報が少ないからといって怪しい保険というわけではないので、安心してください。
保険の性質から考えても、保険代理店に相談・見積もり依頼をしてから加入を検討するほうがよいので、疑問点がある場合は遠慮なく聞いてみましょう。
新型コロナによるイベント中止も対象にすると保険料が高くなる
新型コロナや、今後新たに確認される可能性がある感染症、感染症法に基づいた分類に当てはまらない感染症が流行した場合、契約時点でそうした感染症を理由とした中止を補償範囲に含めていないと、基本的には補償されません。
新型コロナが指定感染症として第二類相当の警戒・対処が必要とされた時期であれば、あらかじめそうした事由を補償対象とするプランを提案されたり、初めから組み込まれた保険商品が存在したかもしれません。
しかし現在は、新型コロナは第五類へ移行していますので、保険設計の段階であえて補償対象に組み込まなければ補償されませんし、その分保険料が高くなる傾向があるといわれています。
さらに、感染症流行によってイベント開催を「自粛」した場合は、法律や行政命令等で明示的に開催が不可能になったわけではないとして、「保険金を支払うに値する事象が発生していない」と判断される可能性が高い点にも注意が必要です。
この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』で動画解説しています!
メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。
ここからは、動画に寄せられた皆さんのご質問、ご感想をご紹介します。
イベント中止保険・興業中止保険について皆さんの反応
この動画には以下のような声が寄せられています。内容を分かりやすくするために一部要約しています。
まとめ
最後までご覧くださりありがとうございます。
イベント中止保険・興業中止保険について、補償内容の基本や保険料、補償額について解説しました。
これはイベントの特徴(内容・規模・期間・開催地)、中止理由、中止を決定したタイミングなどにより、補償の内容や金額が大きく変わる保険です。
対象となるイベントに合わせてオーダーメイドで設計される分、相場感に関する情報が少なく、保険の知識にあまり自信がない方は「なんだかよく分からない……」と戸惑うかもしれません。
こういった保険こそ、保険代理店に相談して、納得のいく保険商品を探すのが一番です。ぜひ活用してみてください。





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