火災保険の加入手続きをしているときは、再調達価額、時価、保険金額など、似て非なる用語がたくさん登場します。
なんとなくの理解でスルーしていると、いざというときに保険金が思ったように請求できないことも。
この記事では、再調達価額の意味と見直し方法を、やさしく丁寧に解説します。
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再調達価額とは?
再調達価額は、同じグレード・規模の建物や家財を「いま新しく買い直す(建て直す)」ために必要な金額です。
新価・新価額とも呼ばれ、物価や工事費の上昇が反映された金額でなければいけません。
個人向け火災保険では、この再調達価額を基準に補償設計するのが一般的になっています。
似ているけど意味が違うもの
時価、保険価額、保険金額は言葉が近いですが、役割が異なります。混同しやすいので、まずはここを揃えておきましょう。
- 再調達価額(=新価・新価額):同等のものを新しく用意するための現在価格
- 時価額:再調達価額から経年劣化分(減価)を差し引いた額(新価 − 減価)
- 保険価額:対象物の経済的価値。個人の建物・家財では実務的に再調達価額を指すことが多い
- 保険金額:契約で決める支払上限(いくらまで補償するか)
以下は、損害額をどの基準で計算するかの違いをまとめた表です。最近の火災保険は新価(再調達価額)基準が主流ですが、商品によって細かい規定は異なります。
| 契約タイプ | 損害額の算定基準 | 受け取れる金額のイメージ |
|---|---|---|
| 新価基準 (再調達価額) |
新価で損害額を評価 (減価を差し引かない) |
原則、新価ベースで支払。ただし支払上限は保険金額。商品によっては「時価限度」規定がある場合あり |
| 時価基準 | 新価 − 減価(=時価)で 損害額を評価 |
減価分は保険金支払対象外になりやすく、受取額は小さくなりがち |
新価と時価について、こちらの記事で詳しく解説しています。

地震保険は時価ベース
地震保険は民間保険会社+政府(再保険制度)で運営される公的色の強い保険です。
火災保険が新価(再調達価額)ベースへ移行している一方で、地震保険は一貫して「時価」ベースで評価・支払いが行われます。
これは制度の目的と財源設計が異なるためです。
目的が「生活再建の下支え」だから時価基準
巨大地震は広域・同時多発で損害額が天文学的になります。地震保険は家計の“初期復旧費用”を迅速に支える趣旨で、原状回復の全額補償ではなく時価相当の一部補償を前提に設計されています。
財源とリスク管理の要請
政府の再保険や支払限度枠で制度全体の支払能力を維持する必要があるため、評価は時価、保険金額も上限・割合でコントロールする仕組みが採られています(各社共通の制度)。
公平性・モラルハザード抑制
新価満額を前提にすると地域差や建築仕様差で過大補償が生じ得ます。時価ベース+定型の支払区分により、全国で公平・迅速な支払いを実現します。
迅速な査定のための標準化
全損・大半損・小半損・一部損の定型区分に合わせ、時価に対する損害割合や構造被害の基準で画一的に判定しやすくしています。
火災保険との制度的な独立性
火災保険が新価でも、地震保険は別制度のため評価基準は連動しません。保険金額も火災保険の一定割合(例:30~50%)などの枠内で設定されます。
- 評価基準:時価(=再調達価額 − 減価)
- 支払区分:全損/大半損/小半損/一部損に応じて、設定した地震保険金額の一定割合(例:全損100%、大半損60%、小半損30%、一部損5%)
- ポイント:火災保険の新価とは切り離して考える。地震保険はあくまで時価ベース+定型割合での給付設計。
少々ややこしいですが、火災保険と地震保険の評価は別、ということは頭に入れておきましょう!
再調達価額はどうやって算出する?
契約時の正式な金額は、保険会社(または鑑定人)が評価ルールに基づいて算出します。
ただし、加入前の検討や見直しの目安として、次の方法で「おおまかな再調達価額」を自分でも推定できます。
前提:再調達価額のしくみを知ろう
再調達価額は、同程度の構造・面積・仕様の建物を現時点で建てる場合に必要な費用をベースに見積もります。
評価には、延床面積、構造(木造・鉄骨・RCなど)、仕上げグレード、付帯工事費、設計監理費、諸経費などが影響します。したがって、物価や人件費、資材価格が上がれば、再調達価額も上がります。
各保険会社には、会社ごとに面積と所在地で再調達価額を計算できる料率のような資料が存在しており、保険契約ではそれを基準に再調達価額を出します。
ハウスメーカーや工務店の情報から算出
自力で再調達価額を推定する王道な方法は、坪単価情報です。
坪単価とは、1坪ごとにかかる建築費用のことで、地域や建物の材質(木造や鉄筋造など)によって違います。
保険を掛けたい家の所在地と”坪単価”を検索してみてください。(例:豊島区 坪単価)
ただし、2025年現在は物価の高騰が止まらず、日々変動しています。
ネット検索で出てきた情報や、お手元にある坪単価の資料が古い場合は、最新の建築費の動向に合わせて軽く調整すると、よりリアルな坪単価が分かりますよ。
具体的には、国交省等が公表する建築費関連の指数や、直近の見積もり事例を参考に、前年からの上昇率・下落率で坪単価を調整し、延床面積を掛け合わせて目安額を出します。
ポイントは、必ず「同等グレード(標準・中級・高級)」で比較することと、外構・解体・仮設・付帯設備などを必要に応じて上乗せすることです。
- 手元の坪単価(入手年次の数字)を確認
- 最新の物価感(建築費指数など)で倍率補正
- 延床面積を掛け合わせる(必要に応じて付帯費用を加算)
保険会社の見積もりツールを使う
一部の保険会社は、ウェブ上で保険金額の概算を出す「見積もりツール」を提供しています。
保険金額は、実務上「再調達価額に近い金額」を目指して設定するため、これらのツールが算出する金額は「その会社が考える再調達価額の目安」に近いことが多いです。
なお、こうしたツールは年に1~数回の更新が一般的で、急激な建築資材高騰などにはタイムラグが生じる場合があります。
直近の価格変動が大きい時期は、ツール結果を鵜呑みにせず、メーカー見積もりや直近の工務店相場と併せて確認するのが安心です。
保険代理店を利用する
保険代理店は、取扱保険会社ごとの評価基準や社内資料にアクセスでき、実務に即した目安を示せます。
新規加入や見直しの相談時に「現在の再調達価額(=適正な保険金額の目安)」を試算してもらえることが多く、商品ごとの注意点(時価限度の有無、臨時費用の割合、免責、支払限度など)もまとめて教えてくれます。
自分で試算した数字と突き合わせて、乖離があれば理由を確認しましょう。
まとめ
再調達価額は「いま同等の家を用意するのに必要な金額」です。
まずはこの金額感を把握し、保険金額が不足しないように設定することが大切です。
自分での目安づくりは、坪単価×延床面積に最新相場で補正する方法が現実的。並行して、保険会社の見積もりツールや保険代理店の試算も活用し、数字をクロスチェックすると安心です。物価や建築費は変動しやすいので、2~3年に一度は見直して「いざというときに足りない」を防ぎましょう。










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