利益補償保険とは?複数店舗・工場での操業停止を補償する保険について解説

保険全般

突然の火災や台風などの自然災害、あるいは感染症の拡大により、複数の店舗や工場が操業停止に追い込まれると、売上の減少に加えて家賃や人件費といった固定費が重くのしかかります。
そんなとき、事業継続の大きな支えとなるのが「利益補償保険」です。
本記事では、利益補償保険の仕組みや対象となるリスク、補償額の決まり方、契約時の注意点などを詳しく解説します。
企業経営におけるリスク対策の一助として、ぜひご参考ください。

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掲載内容は『保険得々チャンネル』で紹介した保険の情報を基に記事として再構成したものです。

利益補償保険(休業損害)とは

自然災害や感染症などで事業を一時的に止めざるを得ない状況でも、売上の途絶だけでなく、家賃や人件費などの固定費が走り続けてしまいます。
利益補償保険(休業損害保険・利益保険とも呼ばれます)は、そうした「本来得られたはずの利益」や休業中の固定費等をカバーするための保険です。
複数店舗や工場を運営される企業様では、一拠点の停止が全体の利益に波及しやすく、備えの重要度が高まります。

感染症による休業補償の記事では、「従業員が感染した店舗の賃借料や売上減少を個別に補償する」タイプの補償をご紹介しましたが、今回ご紹介する利益補償保険は、複数の店舗や工場全体で感染が発生し、それによって失われる利益」をまとめて補償する目的で設計されています。

ただし、この利益補償保険は、各損害保険会社によって商品設計やカバー範囲が大きく異なります。
火災保険に組み込まれているケースもあれば、単独の商品として提供されている場合もあります。
そのため、加入を検討する際には、必ず保険会社から詳細な説明を受け、何が補償され、何が補償されないのかをしっかりと確認することが非常に重要です。

感染症による休業リスクに関して、こちらの記事で詳しく解説しています。
ぜひ併せてご参考ください。

今こそ要チェック!感染症による休業リスクをどう補償?事業用保険で備えるポイント
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利益補償保険の目的

利益補償保険は本来、火災や風水害など「物的損害を伴う事故」による休業を想定して設計されています。
事故で建物・設備・商品が損害を受け、営業が停止・阻害され、その結果として利益が減少した場合に補償されるのが基本です。

主な休業リスクの例

以下は、一般的にカバー対象となる代表例です。
商品設計やカバー範囲は保険会社・契約プランにより異なりますので、最終判断は約款・商品説明でご確認ください。

リスク 想定される休業要因 補足
火災・落雷・破裂・爆発 工場や店舗の損壊で操業不能 復旧に長期を要しやすい
風災・雹災・雪災・水災 建物・設備の破損や浸水 洪水・台風など広域影響
給排水設備の事故 漏水等で施設・商品が被害 設備そのものの故障は対象外の場合あり
食中毒・特定感染症 行政措置により営業停止 補償期間・対象疾病が限定的なことが多い
電気的・機械的事故 生産設備の停止で操業不能 対象設備や範囲に制限がある商品も多い

感染症による休業では、補償内容が大きく異なる

感染症による休業は、自然災害と比べて「補償の対象範囲」「上限期間・上限額」「対象疾病の定義」が厳しめに設計されているケースが目立ちます。
感染症の場合、上述した主な休業リスクに比べ、一定期間が経過すれば比較的早く操業を再開できる可能性があると見なされ、最大利益に対する補償割合が限定されることが多いです。

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に感染症法上「5類」に移行しており、濃厚接触者の法的な扱いも大きく変わりました。
これに伴い、感染症補償の改定や新規引受条件の見直しが行われた商品もあります。
各社で設計が異なるため、以下の点を必ず確認してください。

感染症による休業の「確認すべきポイント」

  • 対象となる感染症の範囲(例:食中毒+特定感染症の限定列挙等)
  • 補償開始条件(例:行政による営業停止・指示等の要否)
  • 補償期間の上限(例:30日・50日など、自然災害より短い設定の例)
  • 支払方式(売上減少×支払限度率 などの算式/日額方式 等)
  • 自主的な休業や需要減のみのケースは対象外になりやすい点

仕入先・納品先が停止した場合

サプライヤーや納品先の被災・事故で自社が操業停止に陥る「サプライチェーン被害」は、基本補償のままでは対象外となることが多く、別途「直接仕入先・納品先物件に関する特約」等のセットが必要です。
複数拠点・多段階の供給網を持つ企業様は、発注先・納品先のリスクも含めて設計しましょう。

補償額はどう決まる?

補償額の考え方には大きく「費用・利益補償型」「休業日額型」の2方式あります。
実際に選べる方式や算式は商品により異なりますが、いずれも「粗利益」「利益率」をベースに支払限度を設けるのが一般的です。

代表的な2方式の比較

項目 費用・利益補償型 休業日額型
支払イメージ 売上減少高×支払限度率−免れた経常費等 1日あたりの粗利益(日額)×休業日数 等
設定の要点 利益率・支払限度率の妥当性 「1日あたりの粗利益」算出と日額・口数
期間設計 約定(てん補)期間:3・6・12か月等 約定復旧期間:30・100・180・365日等
感染症時の上限 列挙疾病のみ・短期上限などの制限あり 日数上限(例:最大50日など)の設計例
≪用語の説明≫

  • 粗利益(売上総利益):売上高−商品仕入高・原材料費等(棚卸調整を含む)
  • 1日あたりの粗利益:年間粗利益÷年間営業(操業)日数
  • 支払限度率/利益率:直近決算に基づき算出(商品別の定義に従う)
  • 支払対象期間(約定復旧期間・てん補期間):契約時に選択(例:1・3・6・12か月や30・100・180・365日 等)

複数店舗・工場で、補償内容を設計する際のポイント

拠点が増えるほど停止リスクは連鎖しやすくなります。
全体最適の視点で、以下をチェックして補償内容を設計しましょう。

≪補償内容チェックリスト≫

  • 主要拠点(本社機能・マザー工場・基幹倉庫)の単一点障害に備えた期間・上限設定
  • 拠点別の復旧想定(建物復旧・設備調達・行政手続の所要期間)と全社利益への波及
  • 食中毒・特定感染症の想定(業態上の発生可能性、行政措置の要否、対象疾病の確認)
  • サプライヤー・ライフライン中断リスクへの特約(直接仕入先・納品先、電気・ガス・水道等)
  • サイバー・システム停止(製造・受発注・決済のデジタル依存度に応じた拡張担保)

契約時に求められやすい資料

スムーズに審査・見積りを進めるため、以下の準備をおすすめします。
数字は実態に即して正確に—後の保険金算定や追徴保険料の有無にも直結します。

≪準備しておくと良いもの≫

  • 直近の決算書・試算表(売上・粗利益・利益率の把握)
  • 年間営業(操業)日数の根拠資料
  • 主要拠点のフロア・設備一覧、BCP・復旧想定のメモ
  • 主要サプライヤー・納品先リストと依存度
  • 過去の事故・食中毒・行政措置の記録(該当がある場合)

てん補対象外になりやすいケースと注意事項

「てん補対象外」とは、保険契約で補償(てん補)の対象にならないケースや事由のことで、損害が発生しても保険金が支払われません。
てん補対象外の代表例を押さえておくと、いざという時のギャップが減ります。
※商品により細部は異なります。

≪よくある「てん補対象外」≫

  • 需要減や自主的な休業のみ(物的損害や行政措置の裏付けがないケース)
  • 仕入先の停止による操業不能(特約未セットの場合)
  • 極短時間の停電・供給異常のみで商品にしか損害がないケース
  • 設備そのものの故障や自然劣化が直接原因のケース(商品により対象外)

 

この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』で動画解説しています!

メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。

まとめ

利益補償保険は、「粗利益」「利益率」「期間」の三つ巴で、複数拠点の「利益」を守る保険です。
自然災害に強い一方、感染症は対象疾病や期間に制限がかかりやすく、特に新型コロナ以降は各社で設計が細分化しています。
複数店舗・工場をお持ちの企業様は、サプライチェーン・ライフライン・システム停止など周辺リスクまで含め、約款・特約の可否と数字の妥当性を丁寧に確認しておくことをおすすめします。
最終的には、拠点横断で「どの程度の期間、利益を守りたいか」を明文化し、証拠資料とセットで契約条件を固めるのが成功の近道です。

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