乾燥した季節になると全国で相次ぐ山火事。その大半は人為的な原因によって起きると言われています。
もし近所で山火事が起きて自宅が燃えてしまったら、またもし自分のうっかりミスで山火事が起きてしまったら。実はこんな時にも使える保険があるんです。
この記事では2025年大船渡市山林火災をはじめとする事例を交えながら、山火事と保険の関係をわかりやすく解説します。
いざという時に保険を活用できるようにして、万一に備えましょう。
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山火事の時に使える保険はどれ?
山火事とは、山林や草地で発生し、樹木や下草など大量の可燃物を燃焼させながら拡大する火災のこと。
落雷などの自然現象、もしくは乾燥した気象条件下での野焼き・焚き火の不始末が主因で、一旦延焼すると強風や地形の影響で急速に広がり、住宅やインフラにも甚大な被害を及ぼします。
| 発生場所 | 発生日~鎮火日 | 焼損面積(ha) | 避難勧告等人数 |
|---|---|---|---|
| 茨城県水府村 | 平成14年3月12日~3月15日 | 69 | 12世帯38人 |
| 宮城県丸森町 | 〃3月17日~3月19日 | 144 | 4世帯20人 |
| 兵庫県宝塚市 | 〃3月19日~3月21日 | 32 | 241世帯718人 |
| 長野県松本市 | 〃3月21日~3月23日 | 170 | 60世帯338人 2施設 |
| 岡山県備前市 | 〃4月4日~4月4日 | 30 | 75世帯185人 |
| 岐阜県岐阜市・ 各務原市 |
〃4月5日~4月6日 | 410 | 1,160世帯 3,613人 |
| 香川県丸亀市 | 〃8月20日~9月3日 | 160 | 15世帯22人 |
| 広島県尾道市・ 三原市 |
〃12月3日~12月4日 | 30 | 4世帯8人 |
| 香川県直島町 | 平成16年1月13日~1月19日 | 122 | 283世帯650人 |
| 広島県瀬戸田町・ 因島市 |
〃2月14日~2月23日 | 391 | 17世帯40人 |
| 愛媛県今治市 | 平成20年8月24日~8月29日 | 107 | 52世帯 |
| 東京都三宅村 | 平成24年11月16日~11月25日 | 156 | 85世帯約146人 |
| 栃木県足利市 | 平成26年4月23日~5月2日 | 72 | 約40世帯90人 |
| 岩手県盛岡市 | 〃4月27日~5月5日 | 78 | 87世帯277人 |
| 岩手県釜石市 | 平成29年5月8日~5月22日 | 413 | 136世帯348人 |
| 栃木県足利市 | 令和3年2月21日~3月15日 | 167 | 305世帯610人 |
| 群馬県桐生市 | 令和3年2月25日~2月28日 | 13 | 4世帯6人 |
| 群馬県みどり市 | 令和3年4月22日~4月26日 | 46 | 24世帯32人 |
| 長野県諏訪市、 茅野市 |
令和5年5月4日~5月5日 | 166 | 144世帯 |
| 山形県南陽市 | 令和6年5月4日~5月12日 | 102 | 148世帯410人 |
| 山口県山口市 | 令和6年9月18日~9月22日 | 37 | 33世帯 |
また、山火事の原因の多くは人為的なものだとされています。

参考:林野庁|山火事の直接的な原因にはどのようなものがあるの?
以上のことから、山火事は人為的な原因が約7割以上で、一度発生すると多くの世帯に被害が出る可能性があるということがわかりますね。
さて、山火事によって多額の出費を迫られた場合、どのような保険が使えるかですが、これは原因や状況によって使える保険は違います。
最初にざっくり書いてしまうと、山火事が延焼して自宅や家財が燃えてしまった場合は、自分が契約している火災保険を使います。
そして自分が原因で山火事が起き、重過失が認められて賠償責任を負ってしまった場合は、個人賠償責任保険、もしくは火災保険の特約にある個人賠償責任補償※を使います。
※火災保険の契約内容にその特約を含んでいる場合にのみ使えます。
山火事の原因×状況ごとに、詳しく解説していきますね。
山火事で自宅が燃えてしまった場合は火災保険を使う
山火事の原因の多くは人為的なもの、つまり誰かの行動によって起きたものだということは先ほど説明しましたね。
原因を作った人が責任を負って賠償するべきじゃないの?
なんで自分の火災保険を使わないといけないの?
…と思う人がいるかもしれませんが、重過失がなければ責任を負わなくてもいいと法律で決められています。
民法 第三編債権 第五章不法行為(不法行為による損害賠償)第七百九条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」に対して
失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス(重大な過失があるケースを除き、失火の場合は過失による失火に賠償責任を負わせない)
参考:失火ノ責任ニ関スル法律
通称『失火責任法』と言います。
日本では比較的燃えやすい木造住宅が密集している住宅地が多めなので、必然的に類焼被害が出る可能性も多いことから、明治32年に制定されました。
この法律によって、山火事であっても重大な過失がなければ、誰かが原因で起きたものでも損害賠償などはできないことになっています。
そのため、山火事が原因で自宅や家財など保険の対象が燃えてしまった場合は、自分の火災保険を使いましょう。
全焼してしまったら保険期間が残っていても火災保険の契約が終了してしまいますので、その点は事前に把握しておきましょうね。

放火が原因だったら?
火災保険は、保険金額の80%以上(※保険会社によって数値は変わります)の保険金を支払うと、契約が終了してしまいます。
そのため、もし山火事が原因で自宅が全焼してしまうと、適切な保険金額を設定していれば火災保険が全損終了になり、再築後にまた火災保険を契約しなおさなければいけません。
そういった事情から、自分の火災保険を使うのが嫌だな…という人もいるでしょう。
山火事の原因が放火だったら、なおさら犯人に責任を取らせたい!と思うかもしれません。
ただ、放火が原因の山火事であっても、基本的には自分の火災保険を使うことをお勧めします。
放火犯がいつ判明するかはわからないので、まずはいったん自分の火災保険で家を直した方がいいでしょう。
もし犯人が判明したら、賠償請求を起こすことはできると思いますが、相手に支払い能力が無ければ十分な賠償を得られる可能性は少ないです。
この辺りは細かな状況によって色々と変わるので、実際に被害にあった際に弁護士や保険代理店に相談しながら進めましょう。
原因がわからない山火事の場合
不明確な原因の火災でも、被害者は火災保険によって再調達価額(新たに同等の家を建てる費用)が補償されます。
原因がわからないってどういうこと?と思うかもしれませんが、実際に2025年2月に発生した岩手県大船渡市の山火事では、明確な原因がわかっていません。
2月26日から始まった山火事で、数日前の19日、25日にも周辺で火事が起きていました。
この辺りの地域では乾燥注意報が出されており、風が強い日も多かったことから、そのせいで火が燃え広がり消火が難航していると言われています。
大本の原因は野焼き、焚き火の火が風で燃え広がったとか、放火だとか、陰謀だとか様々なことが言われていますが、明確な原因の発表はまだない状態です。
住宅の火災とは違い山火事は自然の中で起きる物で、原因の特定は時間がかかります。
原因不明の山火事とは、まだ原因を調べている途中だとお考え下さい。
もし自分が山火事の原因になってしまった場合
野焼きの火が飛んだ、キャンプの焚き火を完全に消火しなかった――このように自分が山火事の原因を作ってしまった場合は、重過失の有無が重要になります。
重過失が認められた場合は、火災によって起きた損害への賠償責任を負うことになるので、とても重要なポイントです。
重過失の有無
失火責任法では「重過失」がある場合は賠償責任が生じます。
この場合の重過失とは、要約すると災害発生が予見できる&ちょっとしたことで予防できる状況を放置したことにより、故意に近い形で損害を発生させた、という事です。
参考リンク:裁判所|裁判例検索
保険代理人に出される問題(あるある)でも、「天ぷらを揚げている途中に電話がかかってきたので火を止めずにその場を離れた結果、火災が発生した」という事例は、重過失にあたるとされています。
最近の火災保険では、事故例や補償例に天ぷらの調理中にうっかりボヤを起こした、といったものが載っているケースもあるので、必ずしも天ぷら調理が原因の火災が重過失にあたるとされるわけではないのですが、それでも危ないとわかる状況で対策をしなかったら、重過失にあたると考えられる可能性が高いです。
重過失にあたると判断されないためには、次のように火の扱いに気を付けて、後始末もきっちりしないといけません。
- 強風や乾燥注意報が出ている日は野焼き・焚き火を中止する
- 周囲5m以内の可燃物を事前に除去し、防火帯を設ける
- 十分な消火用水を確保し、鎮火後は残り火を完全に確認する
- 火の管理を他人任せにせず、現場から離れない
以上のことを怠ると、重過失にあたると判断されますので、その山火事で被害を受けた方から賠償請求がされる可能性が高いです。
賠償する場合は個人賠償責任保険
もし自分が屋外で火を扱い、それが燃え広がったことで大規模な火災が起きた場合、賠償額は規模によって変わりますが、周辺の家屋が被害にあうと結構な金額になります。
| 区分/年次 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 平均 (令和元年~令和5年) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 出火件数(件) | 1,391 | 1,239 | 1,227 | 1,239 | 1,299 | 1,279 |
| 焼損面積(ha) | 837 | 449 | 789 | 605 | 844 | 705 |
| 損害額(百万円) | 269 | 201 | 176 | 345 | 125 | 223 |
この表は林野庁が発表した、令和になってからの林野火災(山火事)の発生件数、被害面積、損害額の表です。
損害額はちょっとわかりにくいですが、1=百万円という意味なので、1億2,500万円~3億4,500万円、平均2億円といった金額です。
少額ならともかく、この金額を支払うことは大半の人は難しいでしょう。
しかし個人賠償責任保険・火災保険の個人賠償責任補償であればカバーできます。
もし自宅の庭で焚き火をしていて火が燃え広がったなど、自宅が火元の場合は火災保険の類焼損害補償特約が使える場合がありますが、保険の対象になっている敷地より外で火を起こした場合は個人賠償責任補償です。
補償上限に注意
一般的に保険は支払う保険金に上限を設定しています。
個人賠償責任保険・火災保険の個人賠償責任補償に関しても同じで、保険商品ごとに上限金額があります。
| 商品名 | 補償の付帯先 | 個人賠償責任の上限金額(国内) |
|---|---|---|
| 東京海上日動 トータルアシスト住まいの保険 個人賠償責任補償特約 |
火災保険特約 | 1億円or無制限 |
| 損保ジャパン 『THE すまいの保険』 個人賠償責任特約 |
火災保険特約 | 無制限(国外1億円) |
| 日新火災 お家ドクター火災保険Web 個人賠償責任総合補償特約 |
火災保険特約 | 1億円(3,000万円/5,000万円も選択可) |
| ソニー損保 個人賠償特約 |
自動車・火災などに付帯 | 3億円 |
※いずれも「対人・対物」共通の限度額です。
示談交渉サービスの有無や国外補償の金額は商品により異なるので、詳細は各社パンフレットでご確認ください。
代表的な個人賠償責任の上限額を見ても、火災の規模によっては全額を保険金で賄うことが難しい場合もあります。
上限を無制限にできたり、上限額をアップさせる、保険金の金額を増やすといった費用特約もあるので、不安な場合はそういった特約も追加するといいでしょう。
この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』で動画解説しています!
メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。
まとめ
山火事で被害者になったら、自宅・家財はご自身の火災保険で補償を受けるのが原則です。
加害者となり賠償責任が生じた場合は、個人賠償責任保険または火災保険の特約を活用します。
失火責任法の適用で重過失の有無が賠償の鍵を握るため、焚き火や野焼きは気象条件と安全管理を徹底しましょう。
補償上限が不足しそうな人は、上限拡張特約の有無をチェックしておくと安心です。




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