火災保険に保険金を請求しても、いくつかの罠に引っかかると、申請が通らないこともあります。
この記事では、保険金請求が却下されたときにどうすればいいのか、理由と一緒に対処法を詳しく解説します。
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火災保険の保険金請求が却下される、よくある理由
保険金請求が通らないときは、イレギュラーな状況を除けばだいたい次の5つの理由に当てはまります。
内容を知っておくことで、対策や再申請がしやすくなります。
1.経年劣化が原因と判断された
火災保険は、経年劣化や管理不足に対してとても厳しい性質があります。
実際、保険の免責事項でも次のように「時間の経過による劣化」を免責(補償対象外)としています。
●風、雨、雪、雹ひょう、砂塵じんその他これらに類するものの建物内部への吹込み、浸込みまたは漏入によって生じた損害
●次のいずれかに該当する損害
a .保険の対象の欠陥
b .保険の対象の自然の消耗もしくは劣化または性質による変色、変質、さび、かび、腐敗、腐食、浸食、ひび割れ、剝がれ、肌落ち、発酵もしくは自然発熱の損害その他類似の損害
c .ねずみ食い、虫食い等
●保険の対象の平常の使用または管理において通常生じ得るすり傷、かき傷、塗料の剝がれ落ち、ゆがみ、たわみ、へこみその他外観上の損傷または汚損であって、保険の対象ごとに、その保険の対象が有する機能の喪失または低下を伴わない損害
出典:風災・雹(ひょう)災・雪災危険補償特約とは|お家ドクター火災保険Web
例えば保険会社へ連絡した際、「前から気になってはいたんですが…」と言ってしまうと、それだけで「時間経過による劣化では?」と判断されてしまう恐れがあります。
申請内容はすべて記録に残るため、言葉選びには要注意です。
また、保険や事故内容に該当する補償の性質などによって、事故が発生してから〇〇日以内に保険会社に連絡しなければいけないと決められている場合もあります。
その日数を超過していると判断された時も請求が却下される可能性があるため、いつ頃発生した損害なのか明確な証拠や根拠がない場合は聞かれても「わからない」と正直に言ってOKです。

2.事故原因の説明が曖昧だった
火災保険では「事故の原因が何か」をとても重視して判断します。
原因が特定できない場合、
- 免責事項に該当する可能性がある
- 誰かの過失の可能性がある(加害者への賠償案件の可能性)
などと判断され、請求が却下されることがあります。
事故報告の際に「気づいたら壊れていた」と言ってしまった場合、損害が起きたタイミングが直近ではないと判断されますし、まったく気づかなかったということは少しずつ破損していった→経年劣化だと考えられかねません。
このように事故原因の説明が曖昧だと、意識していなかった言葉を重視されて、思わぬ判断を下されることがあります。
事故が起きた日時を聞かれたら「発見したのは今日」と答える程度にしましょう。
もし詳しい日時が知りたいと突っ込まれたら「詳細は専門業者の調査に依頼するか、保険会社が派遣する鑑定人の判断を仰ぎたい」といった風に、推測を口にせず自分は何もわからないというスタンスを突き通して大丈夫です。
3.保険対象外の箇所だった
火災保険では、補償の対象が建物・家財のいずれかに分かれています。
加入時に家財を対象に含めるかどうか選べるため、ここを理解していないと「補償されると思っていたのに対象外だった」というケースが発生します。
- 地面に固定されていない物置・収納庫
- 取り外し可能なカーポートの一部パーツ
- 設置型の棚・ラック類(建物にビス固定されていないもの)
- 家の外で自転車に乗っているときに壊れた場合(敷地内に置いた状態なら補償の可能性あり)
- リース家具・家電(賠償扱い。さらに借り物の場合、保管物賠償特約がないと補償されないことも)
- マンションの外廊下や戸建ての門前に置いた段差スロープ(敷地外・共用部は対象外)
保険金を請求する時点で勘違いをしていると、通ると思っていた申請が通らずに、修繕計画がくるってしまいます。
あらかじめ保険の対象と契約している補償についてよく確認してから請求手続きをしましょう。

4.申請書類が不足・写真が不十分
保険会社は、現場確認として鑑定人を派遣するか、写真で状況を判断します。
ただし鑑定人はすぐに来られるわけではないため、応急処置や片付けをする前に写真を撮っておかないと「破損直後の証拠」が不足して却下される可能性が高くなります。
また写真が少ない・暗い・不鮮明といった場合も、原因判断ができず否認されることがあります。

書類の不備がある場合も、追加提出に応じられないとそのまま却下となります。
修理の見積書などは事故連絡の後でも大丈夫なので、必要な書類はできるだけ早くそろえるようにしましょう。
5.契約していない補償が必要だった
火災保険の請求は「事故原因 × 契約している補償」で判断されます。 どれだけ事故の内容が正しくても、加入していない補償の範囲だった場合は保険金は支払われません。
カラスが窓に激突して網戸を破損。
加入者は「飛来物・落下物・衝突」の補償が使えると考えて申請しましたが、どのように衝突したのかと詳細を聞かれた際、次のように答えてしまいました。
「カラスが窓にぶつけたのは足だと思います」
これは”カラスは知能が高いと聞くから、頭から突っ込んでいくことはないだろう”という推測であり、実際にそうだという証拠は何もない状態でした。
結果、「足が触れたのなら飛行中に衝突したとは言い難い」と判断され、「その他偶然の事故(破損・汚損)」扱いに。
しかしその補償を契約していなかったため、請求は却下となりました。
飛来物・衝突物か否かを判断する要素がある程度決まっているため、加入者が衝突された、飛来物がぶつかったと思っても、保険的にはそうだと判断されない状況があるのです。
この実例については、次の記事で詳しく解説しています。

火災保険金請求が却下された時の対処方法【理由別】
請求が却下されても、すぐに諦める必要はありません。
理由に応じて試せる方法がいくつかあります。
専門業者に原因調査を依頼・代理店やそんぽADRセンターを通して交渉する
これは以下の3つの理由のときに特に有効です。
事故原因が免責事項に該当すると判断されてしまった場合でも、専門業者に調査を依頼し「経年劣化ではない」ことが証明できれば、再申請で通るケースがあります。
再申請する際は、代理店を通すことで、代理店があなたの代わりに保険会社と交渉してくれる可能性があります。

そんぽADRセンターとは
保険会社の判断に納得できない時は「そんぽADRセンター」が相談先になります。
そんぽADRセンターは、保険契約者と損害保険会社の間でトラブルが発生した際、中立の立場から相談を受け付けてくれる公的な機関です。
こちらはだれでも利用できるため、保険代理店を通さずに契約したダイレクト型保険、ネット型保険が対象でも大丈夫です。
主な特徴は次の通りです。
- 相談は無料※で利用できる
- 弁護士資格を持つ専門家が対応
- 保険会社との直接の話し合いが難しい場合でも間に入って調整してくれる
- 書面や電話での相談も可能
※状況によっては電話代や切手代などを負担する可能性あり
相談を受けたのち、保険会社へ照会し、再調査や説明を求めてくれます。
「どう考えてもおかしい」「説明に納得できない」といったケースでは、頼れる味方になります。
使えるかもしれない裏技
保険金請求が通らなかったとしても、状況によっては「別の保険」でカバーできる可能性があります。
ここでは見落としがちな補償のチェックポイントを紹介します。
ほかの保険が使えないか確認する
まずは、加入している保険証券やクレジットカードをすべて確認してみてください。
- 勤務先の共済が火災保険と補償重複している
- 自動車保険・自転車保険の個人賠償責任補償が使える
- クレジットカード付帯の保険が役立つ
といったケースもあります。
同じ事故でも“補償のスタンスが異なる保険”なら、通る可能性が残されているということです。
ただ、同じ事故をカバーする能力がある保険・補償を複数契約しているというのは、補償の重複になります。
本来一つでいいはずの補償がダブっている場合、保険料はダブっている分だけ取られますが、保険金はどれか一つからしか支払ってもらえません。
保険料が無駄になっている状況なので、落ち着いたらどれか一つに選ぶなど、保険の見直しをしましょう。

マンション管理組合用の保険を確認
マンションの場合は、破損箇所によっては「共用部扱い」になり、管理組合の火災保険が使える場合があります。
例えば、
- 配管の破損(位置によっては共用部)
- 共用部に置くことを許されている設備の破損
などは、管理組合加入の保険が対象になることがあります。
共用部に置いていたものの破損に関しては、駐輪場の自転車など”置いてOK”となっているもの以外は対象ではないので注意が必要ですが、許されているものに関しては管理組合や保険代理店に一度相談してみる価値があります。


自費で修繕するときに使える助成金や補助金
ここまでの対処法でも難しい場合は、自費修繕になります。
ただし自治体によっては、修繕に使える補助金制度が用意されていることもあります。
住宅リフォーム補助金
住宅のバリアフリー化、外壁修繕、屋根工事など幅広い工事に対して補助が出る制度です。
自治体によって上限額や対象工事が異なりますが、比較的利用しやすく、老朽化した設備の交換や外壁の補修でも対象になることが多いのが特徴です。
ブロック塀や屋根の耐震補助金
過去に、老朽化したブロック塀が倒壊し歩行者が下敷きになった事件をきっかけに、多くの自治体で強化された補助制度です。
危険性の高いブロック塀の撤去・改善、屋根の軽量化などに対して補助が受けられます。
水害対策のための助成金
水害リスクが高まる地域では、止水板の設置や雨水流入対策の工事に補助を出す自治体が増えています。
浸水対策工事にも利用できるため、河川が近い地域や低地に住んでいる人には特にメリットがあります。
高齢者向け住宅修繕の助成金
高齢者が安心して生活できるよう、自宅の修繕や手すり設置、段差解消などに補助を出す制度です。
介護予防の観点から実施されている自治体が多く、高齢者世帯なら比較的使いやすい制度です。
まとめ
火災保険が却下されたとしても、理由を把握し、正しい手順を踏めば再申請で認められるケースもあります。
また、火災保険以外の保険や自治体の補助金が使えるケースもあるため、諦める前にできる対処はたくさんあります。
保険は「知っている人ほど得をする仕組み」です。
トラブル時に損をしないためにも、今回紹介した内容を参考に備えておきましょう。










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