ここ5年で保険業界は大きな変化を遂げました。
自然災害の激甚化、物価上昇、リスク細分化、そして制度改定など、保険料や契約条件にも影響を与える出来事が相次いでいます。
ここでは、2021年から2025年にかけての主な保険ニュースを振り返り、火災保険・自動車保険それぞれの動きと、今後の展望をまとめます。
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2021年 火災保険の参考純率を大幅引き上げ
出典:2021年5月21日金融庁長官への届出(2021年6月16日適合性審査結果通知受領)火災保険参考純率改定のご案内|損害保険料率算出機構
2021年5月、損害保険料率算出機構(GIROJ)は住宅分野の「参考純率」を平均10.9%引き上げました。
背景には、自然災害の多発や修理費・建築資材の高騰、築古住宅の増加など、保険金支払いリスクの上昇があります。
この届出をもとに、各損保会社は翌年2022年に実際の保険料改定を実施し、保険料上昇や契約条件の厳格化へとつながりました。
つまり、2021年の届出は2022年改定の“前触れ”ともいえる重要な動きでした。
2022年 火災保険の大改定と契約期間短縮
2022年10月、火災保険は全国的な改定を迎えました。
保険料の値上げとともに、長期契約期間が最長5年(従来10年)に短縮。
リスクの高い地域では大幅値上げ、低リスク地域では据え置きといった「地域格差型」の設計が導入されました。
また、築年数の古い住宅では免責金額(自己負担額)が自動的に設定されるなど、建物の状態による差も明確化されました。
不正請求対策として「保険金は認定修理を実施することが条件」といった仕組みも導入され、業界全体が健全化を進める年となりました。
2023年 自動車保険は一時的な値下げ傾向
2023年には、自動車保険(特に任意保険)で「値下げ傾向」が見られました。
交通事故の減少、特にコロナ禍による外出控えや運転機会の減少が背景です。
また、国の自賠責保険も約10%の引き下げが行われ、ドライバーにとっては一時的な負担軽減となりました。
しかしこの動きは一時的で、保険会社は早くも修理費や部品コストの上昇を懸念していました。
2024年 火災保険の再値上げと細分化が加速
2024年10月、火災保険は再び大きな改定を迎えました。
損害保険料率算出機構が2023年6月に発表した参考純率改定(平均+13%)を受け、各社が全国平均で値上げを実施。
今回の特徴は、単なる値上げではなく「地域・構造・築年数ごとの細分化」がさらに進んだ点にあります。
加えて、建築資材や人件費の高騰、インフレの影響、老朽住宅の増加など、災害リスク以外の要因も重なり、実質的な保険料上昇につながりました。
火災保険は今や「一律料金」ではなく「個別評価」の時代に入りつつあります。
2024年 自動車保険は値上げに転じる
2024年1月、大手損保各社が自動車保険料を平均2.5〜3%引き上げました。
背景には、コロナ後の交通量回復による事故増加、修理費の高騰、部品供給の遅れ、そして人件費上昇など複合的な要因があります。
前年に値下げが行われた反動もあり、消費者からは「結局すぐ値上げか」という不満の声も。
一方で、保険金支払いの増加を受けて「やむを得ない」「保険会社も厳しい」という理解の声も一定数ありました。
2025年 地震保険の制度見直しと自動車保険の追加改定
2025年9月からは、個人向け地震保険の運用ルールが変更されます。
火災保険と同一期間での契約に一本化され、自動継続特約が廃止されるなど、制度の整理が進められています。
また、自動車保険では2025年1月に再び値上げが行われ、平均3.5〜5%前後の改定が実施されました。
部品・修理費用の高止まりが続き、電動車・先進運転支援システム搭載車の修理単価が上がっていることが主な理由です。

火災保険・自動車保険の値上げ・値下げの流れ(年表)
以下の年表に、2019年から2025年までの火災保険・自動車保険における主な改定の流れをまとめました。
火災保険では特に損害率の上昇が続いており、大幅な値上げが目立ちます。
一方で、自動車保険は安全装備の普及や走行距離の減少などの影響で、一時的に値下げ傾向となる年もあります。
| 年 | 火災保険 | 自動車保険 |
| 2019年 | 値上げ(参考純率+5.5%) | 値上げ傾向 |
|---|---|---|
| 2021年 | 値上げ(参考純率+10.9%) | 据え置き傾向 |
| 2022年 | 値上げ(大改定) | 小幅変動 |
| 2023年 | 据え置き/一部値上げ | 値下げ傾向 |
| 2024年 | 値上げ(+13%) | 値上げ(+2.5〜3%) |
| 2025年 | 据え置き(地震保険制度改定) | 値上げ(+3.5〜5%) |
今後の予測
2026年以降も、保険料の見直しや商品設計の変化は続くと見られます。
火災保険では、災害リスクや建築コストの上昇に合わせた「地域別・構造別の細分化」がさらに進む見込みです。
また、AIやセンサーなどの技術を活用したリスク評価や査定の自動化が広がり、被害確認から保険金支払いまでのスピードが一段と早くなるでしょう。
自動車保険では、電動車や自動運転支援車の増加に伴い、車両の特性や走行データを反映した「個別化された保険料設計」が主流になると考えられます。
一方で、修理費や再保険料の高止まりを背景に、全体としては緩やかな値上げ基調が続く可能性があります。
保険の形は、社会や技術の変化とともに常に進化しています。
今後は「リスクを共有する」だけでなく、「リスクを減らす」ことに焦点を当てた保険サービスが増えていく時代になるでしょう。
この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』で動画解説しています!
メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。
ここからは、動画に寄せられた皆さんのご質問、ご感想をご紹介します。
皆さんの反応
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まとめ
この5年間、火災保険は一貫して値上げ傾向が続きました。
自然災害リスクだけでなく、建築コストや人件費、住宅老朽化といった「社会的コスト」が保険料に反映されているためです。
一方、自動車保険は2023年に一時的な値下げがありましたが、2024年以降は修理費高騰を背景に再び上昇基調となりました。
今後も保険料は経済状況や災害リスクの変化に応じて上下する可能性があります。
加入者にとっては「補償の見直し」「免責設定」「複数社比較」など、より戦略的な選び方が求められる時代になっています。
保険は“安心”を買うためのもの。
変化の時代だからこそ、仕組みを理解し、自分に合った保険の形を選ぶことが大切です。












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