昨今は、2024年8月に発表された「南海トラフ地震臨時情報」など、大きな地震が再び発生する可能性が広く知られるようになり、地震保険への関心が高まっています。
地震保険に加入して備えることも大切ですが、加入後—そして実際に地震が起きた後—にどのように地震保険を活用し、損害保険会社がどのように対応するのかを知っておくことも同じくらい重要です。
この記事では、大規模地震発生後の損害保険会社の動き、地震発生後によくある保険トラブル、その対処法について解説します。
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地震発生後の保険会社の動き
地震保険は、政府(財務省・金融庁)と損害保険会社が共同で運営する制度です。
ただし、地震保険金請求への対応など実務の大部分は損害保険会社が担います。
地震による被害地域が広範囲、かつ被害規模が大きい場合、各社は以下のような特別体制で対応します。
大規模地震発生後1:災害対策室を設営
各社は被災地に最も近い支社や拠点に地震対策室を設置し、地震保険の対応を集中的に行います。
場合によっては当該支社自体が被災し開設が遅れることもありますが、多数の保険金請求・問合せに備え、人員増強や専用電話回線・メールアドレスの増設を行います。
大規模地震発生後2:日本各地から社員が集結
災害対策室には営業・査定担当といった社員がなど全国から集まります。
そして、対応が長期化する場合は、およそ2週間単位で交代勤務となります。
交代するのは仕方ないとはいえ、やり取りをする際は注意が必要です。
被保険者や代理店との連絡窓口(電話番号・メール)は固定ですが、やり取りの途中で社員が交代しているケースがあるからです。
実際に、大規模な地震が発生した後、保険代理店が地震保険に関して損害保険会社とやり取りをしていた途中で、『電話を貰ったから折り返したけど、連絡してきた社員がいなくなってしまって用件が分からなくなった』といったことがありました。
一般の方が、通常の保険金請求の手続きでやり取りをする分には問題ありませんが、込み入った話をする場合は話した内容などを控えておきましょう。
大規模地震発生後3:損害調査員(鑑定人)を派遣
地震による被害で保険金を請求すると、火災保険と同様に損害調査員(鑑定人)が現地確認を行います。
ただし、次のようなケースでは「写真鑑定」などの簡易確認で済ませる、もしくは保険代理店が損害調査員として代理派遣されることがあります。
- 立入制限区域になるなど人員が入れない場合
- 家財だけなど損害が軽微で写真で判定可能な場合
- 調査員の人員不足
- その他、調査員派遣が物理的に困難な状況※
※調査員や損害保険会社の従業員自体が被災し、活動が出来ない状況など。
調査員(鑑定人)は無限にいるという訳ではないので、被害の規模によっては深刻な人手不足となります。
しかし、最近はドローン撮影やAI画像解析を活用した迅速な損害査定の試行も進んでいます。
危険な状況であっても迅速に調査を行うことで、保険金の支払いを早くすることが出来るため、最新技術を使った損害査定方法の確立は注目を集めています。
特に、火災保険の風災・雹災・雪災補償など、自然災害を対象にした損害調査のDX化実験が進んでいるようです。

損害調査員(鑑定人)とは?
損害調査員(鑑定人)とは、保険会社から業務委託を受け、日本損害保険協会が定めた認定基準に基づいて建物・家財の損害状況を調査する人のことです。
地震保険においては、建物や家財の損害が、法律で定められた「全損/大半損/小半損/一部損」のいずれに該当するかを判定する役割を担います。
損害調査員(鑑定人)の調査結果は、保険会社の支払い審査の基礎資料になります。
調査員個人が保険金額を決めるわけではなく、あくまで区分認定を行う点がポイントです。
大規模地震発生後4:損害の認定・審査・保険金支払い
損害調査員の報告に基づき、損害保険会社は損害区分を認定し、保険金を算出・支払います。
地震保険は火災保険とは異なり、損害区分(全損・大半損・小半損・一部損)の4段階と保険金額を掛け合わせて支払額が決まります。
損害区分の詳細は「地震保険に入りたくなるお得な裏ワザ!パフォーマンスを最大限にする加入方法」をご覧ください。

地震発生後によくある保険関係のトラブル
地震保険は特殊な制度であるため、請求時に予想外のトラブルや「知らなかった…」という事象が起こりやすいのが実情です。
事前に把握しておけば、被災時の手続きが格段にスムーズになります。
写真を取り忘れた
地震が発生した後は、もちろんすぐに避難するなど、身の安全を確保することが先決です。
保険証券が無くても保険金請求ができる仕組みが整っているので、避難する前に保険証券を探したり、危険な状況で取りに戻ったりといったことをする必要もありません。
ただし、損害を受けた自宅の片付けをする場合は、必ず片付ける前に写真を撮影しましょう。
大規模な災害が発生した直後は、鑑定(調査員派遣)が遅れたり、コールセンターが混雑して連絡が取れないケースもあるので、先に片付けてしまうことは問題ありません。
しかし、片付ける前に写真を撮影しなければ、地震発生と損害の因果関係を証明できなくなり、保険金が支払われなくなる可能性が高いです。
必ず忘れずに、そして安全を確認した状態で撮影しましょう。
特に家財は、実際に壊れた家財の実物が残っていたとしても、地震発生後の写真がないと地震による損害と認められにくいです。
建物に関しても、応急処置は問題ありませんが、鑑定が終わる前に修理をしてしまうと因果関係の証明が難しくなる可能性があります。
安全確保の次に写真を撮っておくことが大事、と覚えておいてください。
保険金が思っていたより少ない
地震保険は「生活再建資金」を目的とした制度であり、損害を受けた建物/家財を被災前と同じ状態に戻すための仕組みではありません。
火災保険のように修繕・再取得のための費用を全て保険金で賄える※という訳ではなく、支払額は火災保険契約金額の30〜50%(建物上限5,000万円・家財上限1,000万円)の範囲内で設定されています。
※火災保険であっても契約内容や免責事項、条件などにより必要な費用が満額支払われるという訳ではありませんので、あしからず…。
また、地震保険金に関する誤解で言うと、地震に関する損害を補償する共済(以下、地震共済と呼称)も地震保険と同じ補償を受けられると勘違いしてしまい、保険金が少ないと驚くケースも良くあります。
地震共済はあくまでも共済で、政府と損害保険会社が共同で運営する公的地震保険といった存在ではありません。
保険と共済の違いについては、別の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。


損害調査員(鑑定人)の違いによるムラ
損害調査員ごとに、火災保険と地震保険の違いに対する考え方が違う場合、同じ損害であっても調査結果が微妙に変わる可能性があります。
火災保険では損害額を詳細に算定するため細部まで厳密に調査しますし、変な言い方になりますが、損害保険会社への忖度と言ったものも若干あります。
一方、地震保険は区分認定で保険金が決まるため、どの区分に該当するのかを重視して調査するべきです。
しかし、火災保険と同じ要領で『細部まで厳密に』調査する調査員(鑑定人)もいるのです。
調査員によって調査結果に大きな違いが出るというケースはそこまで多くありませんが、特殊な状況ではこの考え方の違いによるムラが保険金に影響してしまうこともあります。
もしこういった状況で、鑑定結果や審査結果に疑問がある場合は、再調査を依頼可能です。
再調査・再審査の流れ
まずは、損害保険会社に対して再審査を希望する連絡を入れましょう。
大規模災害が発生した後は損害保険会社もあわただしいので、多少遅れるかもしれませんが、たいていは申し出が通り再調査や再審査が行われます。
その再審査の結果にも納得が出来なかった場合は、次の第三者機関を通して、中立的な第三者を交えた再審査ができます。
| 項目 | 地震保険損害認定審査会 | そんぽADRセンター(損害保険紛争解決支援センター) |
|---|---|---|
| 所属機関 | 損害保険料率算出機構 | 損害保険協会(一般社団法人) |
| 対象 | 地震保険における損害認定内容に不服がある場合 | 損害保険全般の保険金支払い・対応に不満がある場合 |
| 主な役割 | 損害区分(全損など)の再検討 | 保険会社とのトラブルを中立的に仲介 |
| 手続き | 損保会社を通じて申し出 | 本人が直接申し立て(原則無料) |
| 性質 | 技術的判断の第三者審査 | ADR(裁判外紛争解決手続) |
費用は原則無料ですが、電話代など多少の負担がある場合もあります。
もしもの時のために、この二つの第三者機関はメモしておきましょう。
審査や調査、保険金支払いが遅い
大規模災害時は、損害保険会社側もマンパワー不足に陥り、手続きが遅延しがちです。
2011年の東日本大震災、2024年の令和6年能登半島地震でも、調査員派遣の順番待ちや審査遅延が生じました。
また、地震保険とは関係がない、自動車保険や火災保険などに対する保険金請求も、対策室への人員配置の関係で通常の保険対応の人員が減ることから、手続きが遅くなることがあります。
できるだけ早く手続きを終えるためには、罹災証明書の取得・必要書類の準備を早めに済ませて、不備なく円滑に保険金請求を行いましょう。
この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』で動画解説しています!
メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。
ここからは、動画に寄せられた皆さんのご質問、ご感想をご紹介します。
皆さんの反応
この動画には以下のような声が寄せられています。内容を分かりやすくするために一部要約しています。
まとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
地震保険は政府と民間損保が共同で運営しており、大規模災害が発生すると各社は被災地の近くに地震対策室を設け、全国から社員を動員して迅速な対応を図ります。
損害の確認は建築や損害鑑定の専門資格を持つ損害調査員(鑑定人)が担当し、現地調査が難しい場合は写真やドローン、AI解析などの手法が併用されます。
地震保険金は生活再建を目的とするため、火災保険のように被災前の状態へ完全に戻す全額補償ではないという点にも注意が必要です。
調査結果や審査内容に納得できない場合は再調査・再審査を依頼できるほか、様々なトラブルと対処法についても解説しましたので、この記事は是非ブックマークして後から見返せるようにしてくださいね。








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