火災保険に加入したあと、実際に事故や災害で建物や家財が損害を受けたとき、初めての保険金請求だと戸惑ってしまう人は少なくありません。
経験がある人でも、実は手順としてあまり良くない対応をしてしまっているケースもあります。
この記事では、火災保険の保険金請求について、事故発生から保険金が支払われるまでの流れをステップごとに整理し、初めての人でも分かりやすく解説します!
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STEP1.事故が起きた直後に最優先でやるべきこと
一番大事なこととして念頭においていただきたいのですが、事故が起きた時は安全確保が最優先です。
火災や漏電の恐れがある、建物の一部が崩れそう、水漏れで床が滑りやすいなど、危険がある状態では無理に近づかず、避難や周囲への連絡を優先してください。
安全が確保できて、事故現場に近づいても大丈夫な状態になったら、次に「被害拡大の防止(応急処置)」と「片付け前の写真撮影」を行い、その後に保険会社へ連絡する流れが基本です。
近づけないほど危険な状態の時は無理をせず、離れた場所から写真を撮影した後、保険会社へ連絡しましょう。
安全確保
事故が起きたら、まずは安全確保です。
保険証券のことや請求手続きのことは後回しでかまいません。危険な状況にあるときは避難を最優先にしましょう。
多くの保険では、被害拡大を防ぐ行動が求められている、または推奨されています。
ただし何よりも安全第一です。
近寄っても大丈夫な状態の場合のみ、重要なポイントを押さえて応急処置を行いましょう。
被害拡大防止(応急処置)
ここで行うのは、本格的な修理ではなく、これ以上被害が広がらないようにするための応急処置です。
応急処置の目的は「被害を止める・増やさない」に尽きます。
台風でものが飛んできて、窓ガラスが割れた
→そのままにしていると雨風が入り、部屋の中が水浸しになる可能性があります。
水浸しになると家財や床、壁などがダメージを受けて被害が拡大してしまうため、段ボールやブルーシート、無ければゴミ袋などでもよいので、水が入ってこないようにふさぎましょう。
ガラスでケガをしないように軍手や手袋を着用してください。
ほかにも、ぼや(小規模の火災)、漏水、屋根の破損など、応急処置で被害拡大を防げる事故は色々あります。
保険によっては、応急処置に必要なものの費用を補償してくれる特約もあるので、こういう時のためにつけておくと安心かもしれません。
写真撮影(片付け前に)
応急処置は、被害拡大を防ぐ目的のものです。一方で、生活のためには片付けや掃除も必要になります。
ただ、事故状況の判断や損害の確認をスムーズに進めるためには、掃除や片付けの前に事故現場の状況を記録に残しておいた方がいいですよ。
窓ガラスが割れた場合→
ガラスの破片が室内に落ちている:外からのものがぶつかって割れた
ガラスの破片が屋外に落ちている:室内からものがぶつかって割れた
保険会社や鑑定人は、こうした細かい部分から事故の原因を判断するノウハウがあります。
原因を特定してどうするのかといえば、どの補償・特約に該当する事故なのかを判別します。
例えで出したケースでいうと、
- 室内に破片があり、割れた時その地域に台風が来ていた→風災
- 室内に破片があり、台風ではないが強風が吹ていた→風災
- 室内に破片があり、台風や強風はなく、事故や故意で外から物体が衝突した→飛来物・衝突物・落下物補償
- 屋外に破片があり、子供が室内からおもちゃを投げて割った→破損・汚損補償(その他偶然の事故)
- 屋外に破片があり、大人同士が喧嘩して物を投げ合い、それが窓にあたった→補償されない
と、原因によって適用される補償特約の種類がこれだけ変わります。
また、事故ではなく「そうなるって予測できたはずでしょ」といううっかり損害の場合は、免責事項に該当するため保険金を支払ってもらえません。
こうした判断を保険会社がスムーズに行えるように、事故直後の現場の写真が重要なんです。
写真がない場合、状況によっては保険金請求の審査が長引くことがあります。
撮影方法やどういう構図の写真が必要なのかは、専門の記事があるのでそちらをチェック!

保険会社へ連絡
安全確保、被害拡大防止、写真撮影が終わったら、保険会社へ連絡します。
事故が起きてから連絡するまでの時間は、できるだけ短い方がスムーズです。
当日、遅れても2~3日以内が好ましいでしょう。
修理業者の手配や見積もりは、基本的に後からで問題ありません。むしろ報告時に見積もりがそろった状態だと「え?」「ん?」と思われるかもしれませんね。
連絡方法、連絡先
連絡先は、保険会社が用意した事故受付窓口です。
多くの保険会社では電話のカスタマーセンターがあり、最近はウェブやアプリで連絡できる窓口も増えています。
やりやすい方法でかまいません。
また、保険代理店経由で加入した人は、代理店によって請求手続きのサポートをしてもらえることがあります。
まず代理店に連絡するのもよいでしょう。
アフターフォローの手厚さは代理店によって差があるため、もしもの時に手厚いサポートを受けたい人は、見分け方を解説した記事もチェックしてください。

連絡した時に話すこと・聞かれること
連絡したら、基本的に次のことを聞かれます。
- いつ起きたか
- どの部分の何がどのくらい壊れたか
- 原因は何か
ここで大事なのは、不確かなことはすべて「わからない」と答えることです。
「多分」「なんとなく」「おそらく」といった推測を伝えると、後から事実が違ったと分かったときに審査がややこしくなることがあります。
連絡のタイミングでちょっとしたミスをしたことで保険金請求が却下された事例をまとめた記事があるので、要チェックです。

マンションの場合
集合住宅の場合、損害が専有部分なのか、共有部分か、共有だけど専用使用権がある部分かなどで、修理をする立場と保険金を支払う保険会社が変わります。

事故内容を問わず、保険会社へ連絡する際は管理組合にも連絡しておくとスムーズですよ。
STEP1の時点で保険金請求ができないと分かるケース
実は、連絡した時点で「保険金は支払えません」と案内されるケースがあります。
多くは、その事故内容に対応できる補償や特約を契約していなかったケースです。
例えば、「写真撮影(片付け前に)」の項目でも触れましたが、一つの損害でも原因によって使える補償・特約が変わります。
風災はセットしているけど飛来物特約はセットしていないとします。
そこで、外から物が飛んできて窓ガラスが割れた時、台風や強風が原因じゃないと判断された場合は、セットしていない飛来物特約の補償範囲になるため、保険金を請求しても却下されてしまいます。
このように、契約している補償や特約の内容を、事故が起きる前に大まかでも把握しておくことはとても重要です。
STEP2.保険会社や業者とのやりとり
ここからは本格的なやりとりや手続きに入ります。
なお、状況によっては各項目の順序が入れ替わったり、同時並行で進んだりします。
とくに「見積の取得」と「損害調査」は並行して進むことが多く、見積や写真がそろった段階で正式な請求書類を提出する流れが一般的です。
業者手配
保険によっては、安全な工務店を紹介してくれるサービスがあり、連絡した時点で工務店を紹介してもらえることがあります。
加入している火災保険にそういうサービスがない場合は、事故内容や地域に合わせて自分で修理業者を手配します。
この時に、安さにつられてよくない業者を選んでしまうと大変です。
昨今は悪質な業者による詐欺も増えており、保険会社の担当者でもないのに「これは保険で修理できますよ」と断言して後から嘘だと分かったり、不要な工事を追加して修理費が高額になるなどのトラブルが起きています。
保険金で請求できるのは、その事故で生じた損害を修理するための費用が基本です。
業者を選ぶときは、ネットのレビューや実績の確認も行いましょう。
また、マンションのような集合住宅の場合、管理組合の規定で修理業者が指定されているケースもあるので要注意です。
専有部分の修理でも、工事内容によっては指定業者や届出が必要なことがあります。
見積書の入手
業者に事故現場を確認してもらい、修理にどういった作業をするのか、どのくらいの費用がかかるのかを一覧にしたものが見積書です。
保険金を請求するときは「●●円欲しいです」と伝えるというより、見積書を提出し、そこから補償対象となる金額が保険金として支払われるという流れが基本です。
見積書は、保険会社が支払額を判断するための重要資料になります。
必要書類の提出
STEP1の時点で保険会社に連絡していても、これは事故受付の段階であり、正式な保険金請求そのものではありません。
ここからは、見積取得と並行して進む正式な保険金請求の手続きです。
見積書や写真がそろった段階で、請求書類をまとめて提出する流れが多いです。
代表的な提出書類は次のとおりです。
- 保険金請求書
- 事故状況説明書
- 見積書
- 写真
事故状況に応じて、次のような書類が必要になることもあります。
- 罹災証明:自然災害などの時に
- 警察届出番号:盗難や車が塀にぶつかったなど、警察が関わる事故の時に
- 管理組合の確認書:マンションなど
また、このタイミングではなく後日、「修理完了報告書」を提出することもあります。
提出する写真
「STEP1.事故が起きた直後に最優先でやるべきこと」でも触れたとおり、事故状況の記録として写真を撮影することは重要です。
写真は、保険会社が行う事故状況や損害の審査の材料になります。
保険会社と提携した事故鑑定人が派遣されて現場を詳しく見ることもありますが、写真確認ベースで損害調査を行うケースも少なくありません。
特に自然災害などで広範囲に損害が出た場合は、すべての契約に対して現地調査を行うのが難しいため、写真中心の確認に切り替わることがあります。
できるだけ片付け前に、全体とアップ、角度や距離を変えた複数パターンの写真を用意しましょう。
カメラの設定によっては画像サイズが小さくて不明瞭になったり、逆に大きすぎて提出が大変になったりすることがあります。
撮影するときは慌てずに画像サイズ等の設定を確認し、手振れ補正などの機能も活用すると撮り直しが減って便利です。
写真の提出はネットが多く、メール、もしくは専用のアップロードページが用意されていることが一般的です。
提出方法
手続き書類の提出方法は、郵送での書類提出、またはウェブやアプリへのアップロードがあります。
ウェブやアプリ経由で提出する場合は、見積書を写真撮影するか、スキャナーで取り込んで提出します。
自宅にスキャナーがなく、写真だと文字がぶれて読めない場合は、コンビニの複合コピー機を活用しましょう。実はスキャナー機能もあります。
機能やスキャンデータの受け取り方はコンビニによって異なりますが、一般的には「スマホ保存」ができます。
複合コピー機の機種によっては専用アプリが必要な場合があるため事前に確認しておくと安心です。
見積書を提出するタイミングで、正式な保険金請求の書類を出す流れが”あるある”です。
保険会社の損害調査、審査
保険会社が提携する事故鑑定人が現地調査を行うか、または提出した写真や書類をもとに損害状況を確認します。
事故の原因によって適用される補償・特約が変わるため、原因や状況の確認も重要です。
また、提出された見積の内容と合わせて、保険金を支払ってよいか、支払う金額は妥当かなどを審査します。
この審査で請求を却下された場合は、事故内容、原因、契約内容などで条件に合わない点が見つかっていることが多いです。
よくあるケースと対処方法をまとめた記事があるので、もしもの時に読んでください。

STEP3.修理と保険金支払い
STEP2で必要なやり取りや手続きが進んだら、家を元通りにする流れに入ります。
状況によってはSTEP2の途中で修理を進めるケースもありますが、できる限り「保険会社への連絡」「写真撮影」「見積取得」を済ませ、保険金請求の手続きが進んでから本修理に入るのが理想です。
なぜかというと、もし修理を先に進めた結果、後から保険金請求が通らないと判明した、もしくは想定より減額された場合は、その差額が自費負担になる可能性があるからです。
生活に支障が出る、放置すると被害が拡大するといった深刻な状況では修理を先に進めることもありますが、修理前後の記録や書類の保管は徹底しましょう。
修理と完了報告
色々と手続きが終わってから、業者の修理を開始します。
STEP1からここまで、状況によっては時間がかかることが予想されます。修理前で自宅での生活が困難な時は、仮住まいの費用をカバーしてくれる特約があると安心です。
修理が終わったら、必要に応じて修理完了報告書を保険会社へ提出します。
たまに追加資料を求められることもあるので、関係書類や資料は修理が完全に終わるまで手元に残しておき、役所などに取りに行く書類を求められた場合は、できるだけ早めに取りに行きましょう。
保険金が支払われる
書類がすべてそろい、損害調査・審査が完了したら、その結果に応じて保険金が支払われます。
申請手続きが完了してから保険金が振り込まれるまでの期間は、問題がなければ通常10日前後とされています。
修理費を自費で建て替えたくない場合は、早め&万全な手続きができるように心がけましょうね。
また、最近はAI化の波が保険業界にもやってきていて、AIが審査をするようになればもっと早くなるといわれています。
支払い方法は多くの場合、指定口座への振込です。
支払額は、契約内容や免責金額(自己負担額)の有無、損害の認定範囲などによって変わることがあります。
そして、保険金の金額や契約内容によっては、このタイミングでその保険契約が終了することもあります……。詳しくはこちらの記事をご確認ください。

まとめ
火災保険の保険金請求は、事故が起きた直後の動き方でスムーズさが大きく変わります。
まずは安全確保と被害拡大防止(応急処置)を優先し、片付け前に事故状況を写真で記録したうえで、できるだけ早く保険会社へ連絡しましょう。
その後は、業者手配と見積取得、必要書類の提出、保険会社の損害調査・審査が並行して進むことがあります。
見積や写真がそろった段階で、正式な請求書類をまとめて提出する流れが一般的です。
最後に、本修理は手続きが進んでから行うのが理想ですが、緊急性が高い場合は先に修理を進めることもあります。
いずれの場合も、写真・見積・やり取りの記録を残し、案内された書類を揃えることが、納得のいく保険金請求につながります。





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