新保険法とは?保険に関する法律の変化を4つのポイントに分けて解説!

火災保険

保険に関する法律には「保険法」「保険業法」の2つがあります。
そのうち「保険法」には、2010年に改正された「新保険法」と呼ばれる部分があり、今の保険の仕組みの基礎となっています。
この記事では、それぞれの法律がどんな内容なのか、そして新保険法によって契約者にどんな変化があったのかを分かりやすく解説します。

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掲載内容は『保険得々チャンネル』で紹介した保険の情報を基に記事として再構成したものです。

保険に関する法律とは

保険は「保険法」「保険業法」の2つの法令によって成り立っています。

  • 保険法:保険会社の業務を縛り、保険というもののルールを定める法令。
  • 保険業法:保険会社の下で保険の販売や媒介を行う、保険代理店の業務を縛る法令。

このうち保険法が2010年に改正されており、この改正後の法令を『新保険法』と呼び、改正前のものと区別することがあります。

新保険法とは

2010年の法改正は、特に保険契約者を守るために重要な変更をもたらしました。
新保険法で明確に定められた主な改正点は、次の4つです。

1. 告知義務・通知義務の明確化

保険契約者には、契約を結ぶ際に保険会社へ正確な情報を伝える義務があります。
たとえば、自動車保険なら車検証の内容、火災保険なら建物の所在地・構造・建築年などが該当します。

さらに、契約期間中にリスクが高まる変更があった場合には、保険会社へ知らせる「通知義務」もあります。
たとえば、住宅の一部をたこ焼き屋に改装して火災の危険度が上がるようなケースがこれにあたります。

こうした告知義務通知義務を怠ると、万が一事故が起きても保険金が支払われない、または支払いが保留になる可能性があるため、契約者は十分に注意が必要です。

2. 保険金支払い遅延に対する罰則の導入

保険契約者から正しく保険金が請求されたにもかかわらず、保険会社が支払いを遅らせた場合には、罰則が科されるようになりました。

  • 生命保険: 請求を受け取ってから5営業日以内に支払う必要があります。
  • 損害保険: 確認事項が多いため、30日以内に支払う必要があります。

この期間を超過した場合、保険会社は遅延利息を付けて支払うことが明確に規定されました。
ただし、この30日間の起算点は、請求書提出日からではなく、保険会社が事故状況や請求内容に関する全ての確認事項を完了した時点からとなる点に留意が必要です。

3. 遺言による保険金受取人の変更規定

生命保険では、契約時に指定した保険金の受取人を、契約期間中に変更したいという要望があります。
新保険法では、こうしたニーズに対応するため、遺言によって受取人を変更することが保険会社への通知と同じ効力を持つことが明確に定められました。

ただし、この方法が認められるのは法定相続人の間での変更に限られます。
法定相続人以外の人へ贈与したい場合は、税務上の扱いが異なるため、税理士などの専門家への相談が必要です。

4. 片面的な強行規定の採用

新保険法で特に重要な改正の一つが、「片面的強行規定」の導入です。
もともとは不動産の賃貸契約などで使われていた概念ですが、保険の分野では契約者の保護を目的としています。

この規定の意味は、保険契約の期間中に、保険会社が一方的に約款や社内規定を変更し、契約者に不利な内容へ変えることを禁止するというものです。
逆に、契約者に有利となる変更であれば認められます。
この「契約者に不利益な変更は禁止、利益になる変更は可」という点が、“片面的”と呼ばれる理由です。

特に、かつて存在した35年一括払いの火災保険のような長期契約では、この規定が大きな意味を持ちます。
契約者は、契約期間中に保険会社が約款を勝手に変えて不利な条件にすることを心配せず、安心して契約を続けることができるようになりました。

保険業法とは

保険業法は、保険会社の健全な経営を確保し、契約者を保護するために定められた法律です。
保険法が「契約内容や権利・義務」を扱うのに対し、保険業法は「保険会社や代理店の運営ルール」を定めています。

この法律は、保険会社の設立から業務運営、財務管理、販売体制、監督官庁(金融庁)による指導・検査までを包括的に規制しています。
特に重要なのが、保険代理店の業務を適正に行わせるための規制です。
保険募集人(代理店や担当者)は、契約者に対して正確で分かりやすい説明を行う義務があり、不当な勧誘や虚偽説明などは禁止されています。
また、保険会社は代理店を適切に管理・指導する責任を負います。

つまり保険業法は、保険会社と代理店の行動を監督する仕組みを通じて、契約者を守るための法律です。
保険業界の透明性と信頼性を維持するための「ルールブック」といえる存在です。

新保険法によって保険適用が除外される例外項目とは

新保険法の改正ポイント「4.片面的な強行規定」は、契約者を守るのに非常に有効な規定ですが、適用が除外される例外項目が存在します。
当初、適用除外とされたのは、戦争リスクや震災リスクの影響が大きい以下の3種類の保険でした。

  • 1. 海上保険(貨物など)
  • 2. 航空保険(航空機など)
  • 3. 原子力発電保険

しかし、その後の審議の結果、除外項目に「事業系保険」が追加されることになりました。
これは、事業系保険(例:事業賠償責任保険など)に加入している場合、たとえ契約期間中であっても、保険会社が約款や内規を契約者に不利な方向へ変更できる可能性があることを意味します。
たとえば、売上などの基礎数値の申告に誤りがあった場合に、保険金の支払いを留保するといった対応が認められる場合があります。
そのため、事業系保険の契約者は、契約期間中の約款や内規の変更内容に十分注意する必要があります。

原子力発電保険とは

原子力発電保険は、原子力発電所などの原子力施設において発生する事故や損害に備えるための特殊な保険です。
通常の火災保険や賠償責任保険では補償しきれない、大規模かつ特殊なリスクをカバーすることを目的としています。

原子力発電所で事故が起きた場合、施設の損壊だけでなく、放射能汚染や周辺住民への被害など、影響が広範囲かつ長期に及ぶ可能性があります。
そのため、民間保険会社だけで引き受けることは難しく、国の関与が不可欠です。
日本では「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」に基づき、政府と民間保険会社が共同で保険制度を運営しています。

この保険では、発電所の運転者(電力会社)が原子力損害に対して一定額までの賠償責任を負い、それを超える損害については国が補償する仕組みが取られています。
つまり、原子力発電保険は「公的支援を前提としたリスク分担型保険」であり、国家エネルギー政策や安全保障にも直結する重要な制度といえます。

併用住宅の場合

1階が店舗、2・3階が住宅等となっている併用住宅のように、火災保険契約の中に家計と事業が混在するケースもあります。
この場合、契約の主体が「家計火災保険」であれば、一部に事業用途が含まれていても、片面的強行規定が適用されるという結論になっています。

ただし、保険会社によっては家計火災保険で併用住宅を引き受けず、「事業用火災保険」に加入するよう案内している場合もあります。
契約前には、どの契約形態で引き受け可能かを確認しておくことが大切です。

 

この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』で動画解説しています!
メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。

まとめ

新保険法で導入された「片面的強行規定」は、保険会社が一方的に自社に有利なルールを適用することを防ぎ、契約者を守るための重要な仕組みです。
複雑で理解しづらい約款の中でも、この規定があることで、契約者が不当な不利益を受けないよう法律的な盾となります。

もし保険会社から支払いの拒否や減額など、納得できない対応を受けた場合でも、この法令の存在を知っていれば、正当な根拠をもって冷静かつ毅然と主張できます。
特に長期契約者や、事業系保険を除く一般の契約者は、この規定によって守られていることを理解しておくことが大切です。

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