代理店に来店されるお客さまから「新価はわかるけど、時価ってどういうこと?」というご質問をよくいただきます。
会計基準でいう時価や、お寿司屋さんの“時価”とは全く意味が異なるため、火災保険や地震保険における時価のイメージが湧きづらいのかもしれません。
そこで今回は、新価と時価の違いや保険金にどのように関わってくるのかを詳しく解説します。
火災保険や地震保険を検討している方の知識向上に、ぜひお役立てください。
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評価額とは
保険の対象となる建物や家財が持つ価値を、損害保険では「評価額」と呼びます。
ただし、特定のモノにどのくらいの価値があるかを明確に判断するのは意外と難しく、あいまいな基準で決めてしまうと、保険会社と加入者の間で「その価値は本当に正しいのか?」というトラブルの元になりかねません。
そこで、「この評価方法で価値を出しましたよ」というルールとして設定されているのが、新価と時価という2つの基準です。
保険に加入する際に目にする、「新価基準」や「時価基準」というのは、まさにこの2つの評価方法を指しています。
保険における新価とは
火災保険や地震保険では、新価とは「保険の対象を再調達(修繕・再築・再購入)するのに必要な金額」を意味します。
つまり、新価基準で保険金を支払うタイプの保険は、損害が発生して建物を修繕したり、家財を買い替えたりする“いま”の価値観で支払い額を判断するのが特徴です。
加入している保険が新価基準かつ、保険金額(保険会社から受け取れる保険金の上限金額)が2,500万円以上に設定されていれば、必要な2,500万円を保険金として受け取ることができます。
ただし、損害に対して本当に2,500万円の保険金が必要なのか、そもそも保険金額は建物の価値に見合ったものなのかという点については、保険会社が審査を行います。
新価を算出する際の建築単価の例
各保険会社は、都道府県別・構造別に「1㎡あたりの平均建築単価」を定めており、下記のような金額を目安として新価を算出します。
このデータは契約時に加入者の設定した保険金額が、実際の建物の価値に見合ったものなのかを判断する時などに使用されます。
| 地域 | 1㎡あたりの単価 | |
|---|---|---|
| 木造 | RC造 | |
| 北海道 | 18万円 | 12万円 |
| 東京 | 21万円 | 14万円 |
| 大阪 | 19万円 | 13万円 |
| 福岡 | 19万円 | 12万円 |
上記の表はあくまでも例で、実際の金額は工事の効率や資材費など、さまざまな要素によって変動します。
「RC造のほうが高い」というイメージがあるかもしれませんが、木造と比べるとRC造の方がいっぺんに建築できる範囲が大きいため、単価が低めになっています。
地域や工法、建築時期などによっては変わることもあるため、あくまで目安とお考えください。
保険会社が定める標準的な建築単価とかけ合わせて大きく乖離した金額を申請すると、保険金請求の際に「金額の根拠は?」といった確認が入る場合があります。
そして保険金額設定においても、保険会社が考える新価額から大きく逸脱した金額を設定すると、少し面倒なことになります。
保険金額を新価に合わせる重要性
一般的に、火災保険や地震保険といった損害保険では、保険金額を新価に合わせて設定することが推奨されています。
これは利得禁止の原則という決まりによるもので、損害額以上の保険金を支払うのはダメというルールがあるからです。
そのため、申請した金額が保険金額以内であっても、保険会社の算定する新価から大幅にずれている場合には、希望どおりの保険金を受け取れない可能性があります。
保険金額は保険料にも大きく影響しますので、結果として、「高めの保険料を払い続けてきたのに、満額の保険金をもらえなかった」という事態にもなりかねません。
この状態を超過保険といい、逆に保険金額が実際の建物の価値よりも安く設定されている状態を一部保険と言います。
全部保険・一部保険・超過保険について、こちらの記事で詳しく解説しています。

新価基準の保険を選択した際には、保険金額を建物の実勢価格(再調達価格)に近い額に設定することが大切です。
保険における時価とは
保険における時価とは、「新価から経年による消耗や劣化分を差し引いた価値」のことを指します。
実際のところ、時価基準の火災保険は十分な保険金を受け取れないという理由で廃れつつあり、現在ではあまり多くありません。
しかしながら、保険料が安めに設定されている一部の火災保険では時価基準が採用されている場合があるので、加入前にチェックしておきたいところです。
また、地震保険の場合、「地震保険金額」と「時価評価額」の両方が支払い限度額に関わってくるため、地震保険に加入する際には「地震保険は時価も上限になる」という点を念頭に置いてください。
建物の時価算出方法
建物の時価評価は、下記のような計算式が基本となります。
ここでポイントとなるのが「減価償却率」です。
減価償却率は建物の構造や耐用年数などによって異なり、RC造など頑丈な構造の建物ほど耐用年数が長く、木造建物ほど耐用年数が短い傾向があります。
また、築年数だけでなく、どの程度維持管理されているかによって差し引かれる割合が異なる場合もあります。
例えば、築30年の建物でも、しっかり手入れされていて人が住める状態であれば消耗率が低く見積もられ、最大でも50%程度の減額で済むケースがある一方、長期間空き家のままで管理が行き届いていない場合は、最大90%まで減額されることもあるのです。
上記の具体的な減価率や耐用年数は、各保険会社が独自に決めているため、正確な金額を知りたい場合は見積もりを取り、詳しく確認する必要があります。
家財の時価算出方法
家財も建物と同じ式で時価を算出しますが、耐久性や使用頻度の違いから建物よりも劣化が速いと考えられ、減価償却率は高めに設定されています。
一般的に、以下のような耐用年数が目安とされます。
| 家財の種類 | 耐用年数 | 減価償却率(目安) |
|---|---|---|
| 家電(冷蔵庫、洗濯機など) | 6年 | 約16.7% |
| テレビ・PC | 5年 | 約20% |
| 家具(木製タンスなど) | 10年 | 約10% |
このように数値化しやすい家電製品や家具であれば、ある程度正確な時価評価が可能です。
一方で、食器や日用品などは一点ずつ消耗度を判定するのが難しく、時価を正確に割り出すのは現実的ではありません。
そのため、地震保険などで家財の損害に対して保険金を申請する場合は、保険会社から送られてきた「損害明細書」に購入年や購入時の金額を自己申告で記入し、保険会社がその情報をもとに大まかな時価を判断することが多いです。
もちろん、極端に高額な申告をすると確認が入る場合や、損傷が軽度な場合には「まだ使用できるのでは?」と指摘されることもあります。
また、高額な貴金属やブランド品などは保険会社によって支払い限度額が決められていることがあるため、契約前に確認しておくと安心です。
地震保険の時価について
地震保険では保険金額だけでなく「時価評価額」も支払い限度額に影響します。
しかし、加入者が具体的に時価を把握するのは、実際に被害が起きて保険金を請求するときになってから、というケースが大半です。
多くの場合は保険会社の手配する鑑定人(第三者機関)が現地調査を行い、被害状況を詳しく確認したうえで時価を算定します。
ところが、大地震などで被害が広範囲に及んだ場合は、保険金請求の件数に対して鑑定人の数が追いつかず、地域ごとの一括調査や写真のみの審査になることもしばしばです。
一方で、被災地域が限定的で申請件数が少ない場合には、従来の審査が行われ、鑑定人によっては厳密に時価を算出される場合もあります。
このように、時価の判断や保険金額の査定は被災状況や申請件数などによっても大きく変わることがあるため、あらかじめ「地震被害時には多少のブレが生じる可能性がある」ことを理解しておくとよいでしょう。
地震で被災した際の、地震保険の申請についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

この記事の内容は、家禄堂『保険得々チャンネル』で動画解説しています!
メディアでは語れないもっと踏み込んだ内容についても触れているので、ぜひご覧ください。
新価と時価についてまとめ
火災保険や地震保険で用いられる「新価」と「時価」は、どちらも被害に遭った建物や家財の価値を算定するための基準ですが、支払い保険金や保険料に大きく影響する重要な要素です。
新価基準では再調達価格を考慮した手厚い補償が得られる一方、時価基準は経年劣化を差し引いた額になるため、保険料が安い反面、支払われる保険金が想定より少なくなることもあります。
特に地震保険では時価が支払い限度額になるため、高額な建物や家財をお持ちの方は、地震保険金額だけでなく時価評価を含めたリスクマネジメントを意識することが大切です。
加入前には、保険会社や代理店から見積もりを取り、評価方法や補償内容をしっかり確認しておきましょう。










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